住みやすい戸建ての間取りとは?
家族それぞれに配慮を
家を建てる時、多くの人が「住み心地のいい家がほしい」と考えるでしょう。
とはいえ“住み心地の良さ”とは万人に共通するものではなく、人それぞれの価値観やライフスタイル、思い入れなどによって異なってくるものです。
それは一つ屋根の下に暮らす家族であっても同様で、夫婦や親子でも「広い部屋が好み」「プライバシーを大切にしたい」「インテリアにこだわりたい」など希望はさまざま。
家族の誰にとってもホッと安心できる家を作るために大切なのは、それぞれに配慮をした“バランスのいい家”を心がけることかもしれません。
例えば「キッチンは最もよく使うお母さんの好みを最優先に」「プライバシー確保は成長していく子供のことをよく考えながら」「お父さんの快適なワークスペースを家のどこかに作る」など、各人の譲れない部分を尊重しつつ、全体的な調和をとれたら素敵ですね。
生活の動線をイメージする
“住み心地”にもつながる家づくりの大切な要素の1つが「生活動線」。
生活動線とは家の中にいる時自然に移動する経路のことを指し、間取りと密接に関わっています。
例えば洗濯をする場面なら、家事動線は洗濯機のある場所から洗濯物を干す場所への移動となり、間取りによってこの動線が“洗面所から2階のベランダ”になったり“ランドリールーム内で完結”になったりします。
玄関から子供部屋へ行くのに必ずリビングを通る導線にしておけば、学校から帰ってきたお子さんの姿を必ず目にすることができるため、親御さんにとっては安心でしょう。
最適な家事動線・生活導線を確保した戸建て住宅を建てるため、まずは現在の家族1人ひとりの標準的な動線を洗い出してみてはいかがでしょうか。
そこに「この部分の無駄を省きたい」「もっと家族と会話ができるようにしたい」などの希望を重ね合わせれば、間取りの具体的なビジョンに繋がることでしょう。
日当たりや周囲環境も考える
日本人は日当たりのいい家を好む傾向が強いと言われます。
実際、日当たりのいい家は照明の使用が最小限で済む・洗濯物がよく乾く・気分的にも明るく前向きになれる…などのメリットがたくさん。
特にリビングなど家族が長い時間を過ごす部屋は、南向きに作るか複数の窓を設置するなど、採光を確保したいものです。
建物は上階にいくほど日当たりが良くなるので、立地的に不利な場合には、一般的な1階リビングでなく、2階リビングや吹き抜けリビングといった間取りも検討してみましょう。
開口部を大きく設けることも日当たり面ではプラスになりますが、周辺環境への注意が必要。家が人通りの多い道に面していたりすると、外から家の中が丸見えになってしまう恐れがあるからです。
エクステリアに目隠しの植栽を作ったり窓の内側にスクリーンを付けるなど、プライバシーと防犯面を考慮した工夫を施しましょう。
家族構成別・戸建てでおすすめの間取り
夫婦2人の場合
新婚夫婦2人の住まいでは、2人がコミュニケーションをしっかりと取りつつ、お互いのプライベートも大切にできるような間取りづくりを目指しましょう。
戸建てで2人暮らしならスペースが足りないということはあまりないと思われるので、共有スペースであるLDKや寝室のほか、書斎や趣味の部屋といった“自分だけの空間”を持つことも叶いそうです。
寝室にはダブルベッドを置く方が多いのですが、起床・就寝時間がバラバラな夫婦の場合は、相手を起こしてしまわないために別々のベッドにするのも1つの方法です。
家を建ててから3~5年後の将来も考えておきたいもの。今後も2人で暮らしていくのか子供を考えているのかによって、間取りの選択が変わってきます。
どちらにしても、“予定外”はつきもの。使い方を1つに限定しない、可変性の高い間取りにしておくのがおすすめです。
例えば、夫婦それぞれの個室は将来的に子供部屋にする可能性も加味して配置や広さを考える、「何人にするかは未定だけど複数の子供がほしい」場合は子供用として1つ部屋を用意しておいて可動の間仕切り壁を設置する、といった選択肢があります。
子育て家族の場合
すでにお子さんがいる家庭なら、やはり子供を育てやすい間取りを意識したいですね。
リビングで遊んでいる子供に目が届きやすい対面キッチンや、家の中でもアウトドア気分が楽しめて遊びの幅が広がるウッドデッキなどを検討してみてはいかがでしょうか。
子供が幼児期を過ぎてくると、子供部屋をどうするかという問題も大切です。
この点については「子供部屋が必要なのはおよそ何年間か」ということと「子供が複数の場合、同性か異性か」を軸にして考えると整理しやすくなります。
まず、現代では宿題や勉強は子供部屋ではなく、親の目の届くリビングなどでするのが一般的。また、寝室についても、小学校低学年くらいであれば親と一緒の部屋という家庭が多いのではないでしょうか。
そう考えると、間取りとして独立した子供部屋が必要になるのは小学校中学年頃から高校を卒業する頃までの約10年前後。子供が異性なら、それぞれの部屋があるのが望ましいでしょう。一方、同性であれば、本棚やベッドの配置などを工夫してプライバシーを保ちながらの一部屋でもいいかもしれません。
「子育て家族」として過ごす時間は長いようで案外短いもの。たくさんの思い出がつくれる“我が家らしい”家づくりを楽しみたいですね。
二世帯の場合
親子世帯と祖父母世帯の二世帯で暮らす場合を考えてみましょう。
二世帯住宅には、空間をどこまで共有するかによって次の3種類があります。
- 完全共有型…通常の戸建て住宅に二世帯が同居する
- 一部共有型…玄関は1ヶ所で、フロアで親子世帯、祖父母世帯と別々に生活する
- 完全分離型…玄関が2ヶ所あり、完全にそれぞれの生活スペースを持つ。戸建てが2つ繋がっているようなイメージ
共有するスペースが多いほどコミュニケーションが密になり、電気代や水道代なども抑えられますが、プライバシーを重視するのならば生活空間をキッチリと分ける方がおすすめ。
二世帯がごく近い距離で暮らすことには、日ごろの話し相手がいたり一緒に買い物に行くことができたり、いざという時にお互いに頼ることができたりと色々なメリットがあります。
だからこそ、どちらかが負担に感じたりすること無くほどよい距離感を保てるよう、現在だけでなく将来的なことも考えた間取りを検討してみてください。
積極的に検討したい戸建ての間取りアイデア
戸建ての家におすすめの間取りアイデアをご紹介していきます。
対面キッチン
「対面キッチン」とは、調理台の前に立った時にリビングやダイニング側を向く形になるキッチンのこと。部屋にいる家族の様子がよく分かるのでコミュニケーションが生まれやすく、子供のいる家庭でも目が届いて安心です。
対面キッチンの形にはさまざまな種類がありますが、中でも人気なのは調理台の左右どちらかが壁に付いた「ペニンシュラキッチン」。おしゃれな雰囲気で、アイランドキッチン(左右とも壁から離れた形)などに比べてレイアウトの自由度が高く、キッチンカウンターとダイニングテーブルを横一列もしくはT字型に並べて一体化させることで配膳の動線も良くなります。
パントリー
食料品や日用品のストックなどの保管場所「パントリー」は、大型スーパーでまとめ買いをしたものの収納などに便利なスペース。
パントリーを設置する際にはキッチンから近い場所にするのが一般的ですが、さらに理想的なのはドアを2ヶ所に設け、玄関からもアクセスしやすい間取りにすること。こうすることで、買った物を運び入れる際にもそれを使用する際にも無駄のない動線で作業することができます。
ウォークインクローゼット
一般的な「クローゼット」が扉の外から中のものを出し入れするのに対し、「ウォークインクローゼット」は人が中に入れる、小さな部屋のような収納スペースのことを指します。
おしゃれなイメージと沢山の収納をまとめられる便利さから近年ではもはや定番となりつつあり、家族すべての衣類を1ヶ所に収納する「ファミリークローゼット」や、ランドリールームと繋げて洗濯の動線をシンプルにする間取りも人気。
無駄なスペースを作らずより効果的に活用するには、必要な収納量や使いやすいハンガーパイプの高さなどをよく考えることがポイントです。
ウォークイン玄関収納
ウォークイン玄関収納は「シューズインクローゼット」とも呼ばれ、玄関の土間からつながった収納スペースのことを指します。
靴を履いたまま出入りする場所なので、靴そのもののほか、アウトドアで使う釣り道具やキャンプ道具などの保管場所に最適。屋外に置くことのできるベビーカーや幼児用の自転車なども、屋内に収納すれば防犯面で安心ですし、風雨にあたらずキレイな状態を保つことができます。
ウォークイン玄関収納は、家族構成や趣味などによって理想的な広さや形が異なります。靴の数だけでなく、家族それぞれが置きたいものを想像しながら間取りを決めていきましょう。
リビング階段
リビング階段とは、リビングの中に階段を設ける間取りのこと。かつて主流だった“玄関から廊下が続きその先に階段がある形”に比べ、「外から帰ってきた家族の様子が分かりやすく自然なコミュニケーションが増える」「リビングが広く見えて開放感が感じられる」「階段下を収納として活用できる」といった沢山のメリットがあります。
一方で、2階へ上がる時に必ずリビングを通ることになるので、来客の多い家庭の場合、昇り降りするたびに他人と顔を合わせることがストレスに感じられるかもしれません。
また、キッチンのニオイやリビングの音などが2階へ広がりやすいということも覚えておきましょう。
書斎・勉強スペース
テレワーク全盛の現代、書斎スペースはぜひ設けたい間取り。個室があれば家族の生活音も気になりにくく理想的ですが、スキップフロアや小上がりのような少しプライベート感のある空間を配置し、その一画をワークスペースに充てるのも一案です。
また、リビングや寝室内であっても、本棚を間仕切りにする・デスクの周りだけカーペットの色を変えるなど、ちょっとした工夫で独立性を持たせることができます。
お子さんがいる場合、勉強スペースについても考えておきたいところ。年齢にもよりますが、現代では子供部屋よりもリビングやダイニングで学習するのが主流となっているようですが、リビングのローテーブルで長時間勉強するのは姿勢的に苦しいため、デスクスペースを設けるのがおすすめです。
長机のようにして書斎と勉強スペースをひとまとめにしたり、使う時間が被らない場合はデスクを共有するという方法もあります。
和室・和室コーナー
リビングに隣接する一室や小上がりなどを和室にしたいという方もいらっしゃるでしょう。
畳の部屋の魅力は、特有のリラックス感と使い勝手の良さ。気楽に横になったり座り込んだりできるのは畳ならではと言えますし、クッション性があって下の階に音も響きにくいので子供の遊び場としても最適。泊まりのお客様が来た時には客用寝室にすることもできます。
昔ながらのい草の畳の落ち着ける香りも素敵ですが、近年では和紙製の畳も人気です。
メンテナンスが楽なことに加え、色も緑だけでなくブラウン系やグレー系などおしゃれなものが増えていて、洋風のインテリアにもしっくりとなじみます。