マンションから戸建てに引っ越すときの寒さ対策とは?

マンションから戸建てに引っ越すときの寒さ対策とは?

マンションより戸建てのほうが寒いといわれる理由

構造や間取りの違いから、一般的に戸建てはマンションより寒いといわれています。
冷たい外気に触れる面積が多ければ多いほど室内の熱が逃げてしまって暖まりにくいため寒さを感じやすくなるのですが、戸建ては全面が外気に晒されているため、あらゆる場所から熱が逃げてしまい暖まりにくいのです。

ただし、建築技術が発展し戸建ての気密性や断熱性は年々高まってきているため、我慢できないほどの寒さになることはあまりないはず。
寒さが気になる箇所にはしっかりと対策をすれば、快適な温熱環境を整えることができるでしょう。

戸建ての窓の寒さ対策

寒さ対策を考える際に重要なのが「窓」。
窓からは約50%の熱が逃げるといわれており、寒さの原因になっていることが非常に多いのです。

寒さの原因として「コールドドラフト現象」というものがあります。
これは暖められた室内の空気が外気で冷やされた窓ガラスに触れて冷えてしまい、その冷えた空気が床に沿って流れることで部屋全体までもが冷えてしまう現象のこと。この状態ではなかなか室内を暖めることはできません。

ですが、窓の性能を高めてコールドドラフト現象を抑えることができれば、それは有効な寒さ対策となるのです。
窓の性能を高めるための対策にはどんなものがあるのでしょうか。

ガラスを断熱ガラスにする

「複層ガラス」と呼ばれる2枚組のガラスは、ガラスとガラスの間に中空層があり、断熱性や遮音性に優れているため寒さ対策に有効です。

さらに、Low-E膜という特殊なコーティングにより断熱効果を高めた「Low-E複層ガラス」や、3枚のガラスを使用し中空層が2つある「トリプルガラス」なら、より高い断熱性能が期待できます。

サッシを「アルミ樹脂複合サッシ」にする

窓枠を「アルミ樹脂複合サッシ」にするのも良いでしょう。
古い家屋にも多いアルミサッシは耐久力があって安価なのが利点ですが、熱を通しやすいため断熱性においては劣ってしまいます。

最も断熱性が高いのは「樹脂サッシ」ですが、劣化しやすく強度が弱いというデメリットが。
「アルミ樹脂複合サッシ」であれば両方の利点を兼ね備えているのでおすすめです。

断熱シート・断熱ボード・断熱パネルを貼る

すぐにできる簡単な方法としては、窓に断熱シート・断熱ボード・断熱パネルを貼ることが挙げられます。
ホームセンターなどでさまざまな種類が比較的安価に販売されており、設置が簡単なものもあるのでご自身で対応できます。

窓にはほとんど設置されているであろうカーテンも寒さ対策には有効。しっかりした厚みと床までの丈があれば、断熱効果が期待できます。
最近では、カーテンの裏地に特殊な加工がされた断熱カーテンも販売されていますので、手軽に断熱効果を得ることができるでしょう。

スクリーン部分の断面形状がハニカム(蜂の巣)構造になっている「ハニカムシェード」を設置するのも効果的。
スクリーン内部の空気の層が断熱効果を発揮して、室内の暖かさを保ってくれます。

ドアも断熱できる

なお、窓ではありませんが、ドアも空気が逃げる原因のひとつ。
特に玄関ドアは直接外に面しているため、ドア枠の間の隙間に隙間テープを貼って対策をするとよいでしょう。その他、玄関ドアの室内側に断熱カーテンをつける方法も有効です。

戸建ての床の寒さ対策

冷えた空気は下に溜まり、暖かい空気は上に昇りやすいという性質があります。

暖房で部屋を温めても冷えてしまった空気は床に沿って広がり、床部分はなかなか暖まりません。
つまり、床部分の寒さ対策をすることで暖かさが格段に上がるのです。

床暖房を設置する

床部分を暖めるのに最も有効なのは「床暖房」。足元からじんわりと暖かくなるだけでなく、空気を自然に循環させるため部屋全体を暖めることが可能です。
床暖房には大きく分けて「温水式」と「電気式」の2種類があります。

温水式は床下のパイプに温水を循環させて暖める方式のこと。施工の手間はかかりますが、広い範囲に設置するとランニングコストを抑えることができます。

もう一方の電気式は、潜熱蓄熱材やコンクリートの床に直接熱を蓄える「蓄熱式」と、使うときだけ通電する「非蓄熱式」に分かれます。設置するときは設置費用やランニングコストも考慮するとよいでしょう。

断熱材を入れる

床下に断熱対策を施して冷たい空気の元を断ち、冷えにくい床にする方法もあります。断熱材を床下の地面に敷き詰めることで地面からの冷たい空気を押しとどめるのです。

使用される一般的な断熱材はロックウールやグラスウールと呼ばれる繊維の束を押し固めたもので、繊維の間に空気を溜めて熱を通しにくいという性質を持っています。

敷物を敷く

床にカーペットや絨毯、畳を敷くことでも対策は可能。
下に断熱シートを敷いたりカーペットや絨毯を内部に空気を含むウール素材にすれば、さらに断熱性能が高くなるでしょう。
もちろん、ホットカーペットであればいうまでもなく床を暖めることができます。

タイルカーペットやコルクシートのようなジョイント式の床材なら簡単に設置でき、たとえ小さな子供やペットが汚してしまったとしても汚れた部分だけ交換できるので安心です。

戸建ての壁の寒さ対策

壁からも約20%の熱が逃げており、断熱効果のある壁紙を貼ることで対策ができます。
シールタイプのものやタイル状になったものがあるので、壁の種類や好みに合わせて選びましょう。

本来は壁の内側に入れる壁用の断熱アイテムを壁の表面に貼り付ける方法もあります。
発泡スチロール素材や軽い板状の断熱アイテムを両面テープなどで壁の表面に貼り付け、上から壁紙やリメイクシートを貼るなどして隠してしまえば見栄えもそれほど気になりません。

家具と壁の隙間にプチプチ(気泡緩衝材)を貼っておくのも一手。プチプチの空気の層が熱を逃さないようにしてくれます。
家具の裏側なら目立ちにくいので、見栄えも気になりません。

暖房器具での寒さ対策

暖かい空気は上にいきやすく、冷えた空気は下に溜まりやすいという性質は、エアコンなどの暖房器具を使う際にも思い出して欲しいポイントです。

暖房器具を使っても部屋の上には暖かい空気の層・下には冷たい空気の層ができてしまうとなかなか部屋全体を暖めることができず、足は冷たいのに頭は熱くてぼうっとする状態になってしまいがち。
これを解消するには空気を循環させる必要があります。

エアコンを使った工夫

エアコンなら風を下向きに設定しましょう。
床に向かって吹き出た暖かい空気が自然と天井に向かって上がっていくので空気の循環が起こり、部屋前体を温めることができます。

エアコンはスイッチを入れた直後をはじめとして、温度を上げるときに多くの電気を使います。
スイッチを切ったり入れたりしていると電気代がかさんでしまうため、温度調節はエアコンに任せておくのがベストです。

他の家電を使った工夫

空気清浄機やサーキュレーターを使って冷たい空気と温かい空気を攪拌(かくはん)する方法もあります。
この際、空気清浄機が窓際の冷たい空気を部屋の中に取り入れてしまうことがないよう、壁や窓から少し離れたところに置きましょう。

吹き抜けなどで天井が高い場合は、シーリングファンを使うのがおすすめ。
シーリングファンとは部屋の天井に取り付けるファンのことで、部屋の上と下の空気を攪拌して温度を均一にしてくれます。

見た目もおしゃれに寒さを対策できるのがメリットですが、家の状態によっては天井に取り付けられない場合もあります。

マンションよりも戸建てが寒さを感じる理由とは

マンションよりも戸建てが寒いと感じるのには、構造上の違い・間取りの違い・外気に触れている面積の違いという3つの理由があります。

構造上の違い

戸建ては基本的に木造住宅なので、構造上どうしても気密性や断熱性の面で鉄筋コンクリート造のマンションに劣ってしまいます。

木造はコンクリート造に比べて気密性が低く建物に隙間が生じやすいうえ、蓄熱性も低めです。

築年数が経つと木材の反りや縮みの影響もあり、隙間ができやすいことも要因として挙げられます。
隙間から暖かい空気が逃げ、外の冷たい空気が入ってくるので寒く感じてしまうのです。

間取りの違い

戸建ての多くは二階建て以上となっているため上の階につながる階段があり、さらに吹き抜けがある家も少なくありません。
開放的でゆったりと生活できる反面、暖かい空気は上に昇り冷たい空気は下に溜まってしまうので、部屋全体を暖めにくいというのも寒く感じてしまう要因です。

マンションの場合はワンフロアがほとんどなので、暖房が効きやすく寒さを感じにくいのです。

外気に触れている面積の違い

戸建ての方が窓の数も多いうえ、建物が独立しているため、屋根・外壁・床などの外気に触れる面積がマンションに比べて多い分、冷たい外気の影響を受けやすく熱が逃げやすくなります。
窓の面積が多いほどコールドドラフト現象が起こりやすくなり、寒さにつながってしまうのです。

寒さに強い戸建てかチェックするポイント

周囲を冷たい外気で囲まれている戸建ては、断熱性や気密性を高くすることで寒さを回避し、快適な温熱環境につなげられます。

断熱性・気密性とは

断熱性とは、外気の暑さや冷気を室内に入れないように遮断する能力のこと。
気密性とはどれだけ隙間をなくし、外と室内の空気の出入りを少なくしているかを指します。

つまり、断熱性が高ければ冷たい外気の影響を受けにくく同時に熱を逃がしにくくなり、気密性が高ければ冷たい外気の侵入を防げるので暖房効果が上がるということです。

断熱等性能等級とは

断熱性のわかりやすい基準として、「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」に定められている断熱等性能等級があります。
これは国土交通省が制定しているもので、1から7まである等級が上がるほど断熱性能が高いということになります。

等級が上がるのと比例して建築費用も高くなるため、快適な生活を送るメリットと費用がかさむデメリットを比較検討しながら適切な等級を模索しましょう。
等級の高い戸建てには行政から補助金が下りる可能性もありますので、条件等も含めてチェックしてください。

断熱等性能等級について、2022年4月以前は等級4が最高水準に位置していました。しかし2022年4月に等級5が創設され、同年10月には等級6・7が新しく創設されています。
2025年4月以降はすべての新築住宅に等級4が義務づけられることになっており、等級4は最低水準になってしまいます。

このことから、昨今の戸建てには高い断熱性・気密性が求められており、今後はさらに寒さを感じにくい快適な戸建てが増えていくことが伺えます。

寒さに強い家づくりをするメリット

1年中過ごしやすい

季節に関わらず年間を通して快適に過ごすことができるので、寒い日の朝でもベッドから出るのに抵抗がなくなり、暖房器具の前から動けないといったこともありません。

また、暖かいリビングから寒い浴室に移動するといった急激な温度変化によって血圧が急変して起こる「ヒートショック現象」のリスクも回避できます。
特に高齢者や脳卒中・動脈硬化の傾向がある方にとっては、部屋ごとの温度差が少ないことは大きな安心材料となります。

壁・床・天井などにカビを発生させたり建物の基礎を腐らせてしまったりする「結露」を防げることもメリットのひとつ。
ただし、寒さに強い家なら何もしなくても結露を完全に防げるというわけではないので、換気や湿度管理はしっかりしておく必要があります。

光熱費を節約できる

冬は暖房費がかさむご家庭も多いと思いますが、高断熱・高気密の家なら室内の暖かい空気が漏れにくく冷たい外気の侵入も抑えられるので、少ない暖房器具でもすぐに暖まり、快適な温度を長時間保てます。

エアコンなどの設定温度もそれほど上げなくてもよいので暖房効率が上がり、光熱費の節約にもつながるので、長い目で見ると大きな利点といえます。

防音効果が高まる

気密性が高い家なら、冷たい空気の侵入を防ぐのと同じように音の侵入も防いでくれますし、反対に室内の音が外に漏れ出ることも防ぎます。

音は気になりだすとつい反応してしまい落ち着きかないもの。家の中で静かに過ごしたい方や楽器の練習などで音漏れを気にする方にはうれしいメリットです。
ペットを飼いたいけれど鳴き声でご近所に迷惑がかかるのでは…という心配も軽減できるでしょう。

新築・リフォームで補助金が活用できる

断熱リフォームをする際には、国の補助金制度である「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」の利用ができます。
窓やドアを高断熱窓・ドアに改修したり壁・床・天井に断熱材を入れる場合に活用できる補助金・助成金制度で、補助金の額は補助対象経費の1/3以内とされており、上限額は120万円。
住宅全体の断熱リフォームなら「トータル断熱」、居間を含めた数カ所の窓のリフォームは「居間だけ断熱」のどちらかを選んで申請します。

申請はリフォームする物件の所有者が行います。
申請受付期間があり、国の補助金予算を使い切ってしまったら受付終了となりますので、早めの申請がおすすめ。

申請後に公社の審査をクリアしたら「交付決定通知書」を受け取り、工事契約・着工という流れになっています。
交付決定より前に工事契約・着工してしまうと助成対象にならないので注意してください。
また、定められた締切日までに実績報告ができなかった場合も助成金が支払われません。申請から交付決定まで1ヶ月程度かかると予想されますので、余裕を持って申請しましょう。

他にも「ZEH補助金」「こどもみらい住宅支援事業」などいろいろな補助金制度があります。すべて細かく条件があるので、当てはまるかどうかを確認してみましょう。

寒さを感じにくい家づくりについて詳しく知るなら

高性能住宅を得意とする神戸の注文住宅会社「WHALE HOUSE」では、断熱性や気密性といった家の性能について詳しくお伝えする「家づくりセミナー 性能編」を定期的に開催しています。

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