耐震基準とは
耐震基準ってどんな基準?
耐震基準とは、「建築基準法」及び「建築基準法施行令」によって定められた耐震性能の基準。
建築確認申請手続きを通じて建築の許可をするための条件として国が定めています。
しかし、一定の割合で耐震基準を満たしていない違法建築が存在しています。
1950年に制定された建築基準法の制定以降、耐震基準に関しては大きな見直しが3回行われました。
そのため、現在運用されている2000年の改正内容に基づいた耐震基準を満たしていない住宅が存在するのです。
違法建築かどうかの判断は難しいので、建築士や住宅インスペクター(住宅診断士)に住宅診断をしてもらいましょう。
旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準とは
旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)5月31日までの建築確認において適用されていた基準です。
震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、破損したとしても補修することで生活が可能な構造基準であることを表します。
技術的には、建物自重の20%の地震力を加えた場合に、構造部材に生じる応力が構造材料の許容応用力以下であるかどうかで判断します。
一方、新耐震基準とは、旧耐震基準の翌日以降である1981年(昭和56年)6月1日から適用されている基準で、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されています。
2000年基準は、1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災で多くの木造住宅が倒壊したことから、その耐震基準をより厳しくしたもの。
①地盤に応じた基礎の設計、②接合部に金具取り付け、③偏りのない耐力壁の配置の3点が大きな変更点で、旧耐震基準をより強化し、バランスの良い家づくりを義務化しています。
耐震基準をクリアするメリット
住宅ローン減税制度
「住宅ローン減税制度」とは、住宅ローンを利用して住まいを購入した場合に「年末時点での住宅ローンの残高の0.7%」が入居時から13年間にわたって給与などから納めた所得税や住民税から控除される制度のこと。
「住宅ローン控除」または「住宅ローン減税」として知られる制度ですが、正式には「住宅借入金特別控除」といいます。
支援金制度
自治体によって耐震診断費用の支援金制度があります。
各自治体によって内容に違いがありますが、大半は次のような基準を定めています。
- 昭和56年5月末日以前に建築確認を得て着工したもの
- 住戸数の半分以上に区分所有者本人が居住していること
- 3階以上で延べ面積が1,000m2以上
- 対象建築物所有者でこれから耐震診断を実施しようとする人で市税などの未納がない人
登録免許税軽減
特定認定長期優良住宅や認定低炭素住宅、特定の増改築等がされた住宅用家屋(耐震改修やバリアフリー改修、省エネ改修など)は、条件を満たせば「所有権移転登記の登録免許税の軽減」を受けることができます。
不動産取得税軽減
一定の床面積要件を満たす新築住宅の他、中古住宅であっても新耐震基準に適合し、床面積の条件を満たした物件なら、不動産所得税の軽減を受けられる場合があります。
固定資産税軽減
一定の床面積要件を満たす新築住宅をはじめ、現在基準を満たしていない住宅でも、新耐震基準を満たすように耐震改修工事を行えば、1年間に限り固定資産税が軽減されます。
すまい給付金
2019年(令和元年)の消費税引き上げの影響を軽減するために導入された給付金です。
すまい給付金を受けるためには、床面積50㎡以上、新築なら第三者による現場検査を受けている必要があります。
中古の場合は、売主が宅地建物取引業者で新耐震基準に適合していること、売買時に第三者の検査を受けていることなどが条件となります。
地震保険の耐震診断割引
新耐震基準に適合した物件であれば、割引を受けられる可能性があります。
国土交通省が定める耐震等級を有していた場合、地震保険の保険料が10~50%程割引されます。
耐震基準の変遷
- 1920年(大正9年)…市街地建築物法施行。日本で初めての建築法規で、建築基準法の原型と言われています。
- 1924年(大正13年)…市街地建築物法の大改正。耐震規定が初めて盛り込まれました。
- 1948年(昭和23年)…震度6の福井地震が発生。
- 1950年(昭和25年)…建築基準法施行令が発令され、旧耐震基準が制定されました。
- 1959年(昭和34年)…建築基準法の改正。防火規定が強化されました。その後、耐震基準は1971年と1981年、2000年に大きな改正が行われています。
- 1968年(昭和43年)…十勝沖地震が発生。
- 1971年(昭和46年)…建築基準法施行令改正。十勝沖地震を踏まえたもので、鉄筋コンクリート造のせん断補強基準の強化が図られました。
- 1978年(昭和53年) …震度5の宮城県沖地震が発生。
- 1981年(昭和56年)…建築基準法施行令大改正。現在の新耐震基準が誕生しました。1981年5月31日までに確認申請を受けた建物を「旧耐震」、1981年6月1日以降に確認申請を受けた建物を「新耐震」と呼んでいます。新耐震基準には「許容応力度計算」と「保有水平耐力計算」の概念が取り入れられています。
- 1995年(平成7年)…震度7の阪神・淡路大震災が発生。
- 2000年(平成12年)…建築基準法改正。木造住宅で地盤調査が義務づけられました。また、木造住宅で接合部の金物が指定され、耐力壁の配置のバランスが規定されました。
- 2001年(平成13年)…品確法により「耐震等級」が制定。
- 2007年(平成19年)…建築確認・検査が厳しくなり、3階建て以上の共同住宅では、中間検査が義務化。
- 2008年(平成20年)…長期優良住宅の普及に関する法律が制定。旧耐震では「震度5程度の中規模の地震で大きな損傷を受けないこと」が基準となっていましたが、新耐震では、「中規模の地震では軽微なひび割れ程度、大規模な地震では建物の倒壊や損傷を受けないこと」という基準に変わっています。
実際の地震での被害は?
関東大震災では、炎を巻き込んだ竜巻状の空気の渦が発生し、猛烈な炎と風によって急速かつ広範囲の火災延焼を引き起こしました。
阪神・淡路大震災では、神戸市中心部で大規模な火災が発生。住宅が倒壊し、道路が通れなくなるなどの交通障害も生じました。
東日本大震災では、東北地方から関東地方にかけての太平洋沿岸を巨大な津波が襲いました。
その他、東京湾岸地域では液状化現象が発生。震度7を観測した地域だけでなく、長周期地震動により、震源から遠く離れた大阪市などの高層ビル上層階でも大きな揺れなどが起きました。
耐震基準と耐震等級との違い
耐震等級とは、地震に対する建物の強さを表したもの。
耐震基準とは、「建築基準法」及び「建築基準法施行令」によって定められた耐震性能の基準です。
耐震基準は人命を守ることが目的なのに対し、耐震等級は人命を守ることに加えて建物そのものを守ることも目的としています。
地震に対してより安全性を求めるなら「耐震等級」を重視しましょう。
耐震基準はどう測る?
耐震基準の確認方法
耐震基準が旧耐震基準なのか新耐震基準なのかの確認は、「建築確認日」を見ることで判断します。これは建物の施行日や築年月ではなく、建築確認申請が受理された日のこと。
建築確認申請とは着工前に役所に書類を提出することで、建築物を建てる際は必ず法令に沿っているかどうかの審査を受ける必要があります。
この建築確認日が新耐震基準の施工日である1981年6月1日以降であれば、その建物は新耐震基準で建てられていると判断できるのです。
建物が建築基準法で定められた基準を満たしていることを示す証明書として「耐震基準適合証明書」があります。この証明書を取得すれば、住宅ローンの控除や中古住宅の登録免許税・不動産取得税の減税適用を受けることができます。
耐震基準適合証明書は建築士や指定確認検査機関、または登録住宅性能評価機関に依頼し、耐震診断を受けることで取得が可能。
耐震診断の結果、旧耐震基準の建物であることが分かったとしても、耐震改修をすることで新耐震基準を満たす建物になれば、耐震基準適合証明書を取得することが可能になります。
耐震診断とは
耐震診断とは、地震が起こった時に建物が揺れに耐えうる「耐震性能」を持っているかを調べること。
耐震診断は民間企業や一般財団法人など様々な企業や団体が実施しています。
日本の建物はすべて建築基準法によって建てられていますが、古い時期に建てられた旧耐震基準の建物ほど地震に弱い傾向があります。
そのため、中古住宅を入手する際は事前にしっかりと耐震診断を受け、必要に応じて改修工事を行う等の地震対策をする必要があります。
耐震基準を満たしていなかったらどうする?
診断の結果、耐震基準を満たしていないことが分かったり、旧耐震基準の建物を購入したりといった場合は、耐震補強工事が必要となります。
耐震補強工事とは、土台や筋交い、柱などの接合部に耐震金物を取り付け、建物の強度を補強することで耐震性を向上させる工事のこと。
戸建ての場合は屋根や壁、梁や柱などの接合部、建物の基礎部分が耐震補強の対象箇所。地震に耐える壁が少ない場合や壁の配置バランスが悪い場合、壁に筋交いを設置し、耐震性を増すことで倒壊などの危険を防ぎます。
その他、既存の壁に耐震パネルを取り付けて強度を増したり、新たに壁を増やしたりして耐震性を向上させることも。
マンションの場合は、耐震壁の増加、柱の補強、柱周りに隙間を設けて揺れを逃すなどの工事です。
また、耐震ブレースと呼ばれる筋交いのようなタスキがけの鉄骨を挿入して補強、制震ダンパーや免震装置を組み込むことで地震の揺れを低減させる、といった方法があります。
地震に強い家を作るために
耐震性をチェックするポイント
財団法人日本建築防災協会による「誰でもできるわが家の耐震診断」は、国土交通省が監修している、耐震性を自己チェックできる診断方法。
以下に概要をまとめましたので、参考にしてみてください。
- 新築は1981年(昭和56年)以降
- 今まで大きな災害に見舞われたことはない
- 増築していない。または建築確認などの手続きをして増築した
- 傷んだ箇所はない。または傷んだところはその都度補修している(傷んだ箇所とは、主に外壁や基礎のヒビ割れを指す)
- 建物の形はほぼ長方形、複雑な形ではない
- 一辺が4m以上の大きな吹き抜けはない
- 2階外壁の直下に1階の内壁または外壁がある。または平屋建てである
- 1階外壁の東西南北どの面にも壁がある
- 屋根材は比較的軽いものである。または瓦など比較的重い屋根でも1階に壁が多い
- 鉄筋コンクリートの布基礎・ベタ基礎・杭基礎など基礎が強固である
耐震・制震・免震の違い
地震に対等するための構造には、建物を強くする「耐震」、建物と地盤を切り離して揺れを伝えにくくする「免震」、ダンパーなどを使って地震の揺れを吸収する「制震」があります。
耐震構造とは、頑丈な柱・梁で地震などの揺れで倒壊しない強度の高い構造のこと。
制震構造と免震構造は、地震が発生した際にそのエネルギーが直接建物に伝わらない構造を指します。
制震構造は建物の中におもりやダンパーを設置して建物全体の揺れを軽減します。
それに対し、免震構造は建物と地盤の間に特殊なゴムなどを取り入れており、それが地震などの揺れを吸収し揺れを軽減するという仕組みになっています。
耐震基準と似ている「耐震等級」とは
耐震基準以外に耐震性を測る基準として、耐震等級があります。
耐震等級は品確法に基づいてできた住宅性能表示制度で、地震に対する建物の強度を示す指標のひとつ。
建物の耐震性によって1~3の3等級に分かれ、等級の数字が大きいほど建物の耐震性が高いことになります。
耐震等級1:最低限の耐震性能
数十年に1回程度発生する震度5強の地震で著しい損傷がなく、数百年に1回程度発生する震度6強~7の地震でも倒壊や崩壊しないレベルです。
耐震等級2:長期優良住宅
耐震等級1の1.25倍の耐震強度があります。
つまり、震度6強~7の地震の1.25倍までは倒壊や崩壊しないレベルだということ。
災害時の非難場所とされている学校や警察署などは、耐震等級2以上を確保することが定められています。
耐震等級3:大地震にも強い
耐震等級1の1.5倍の耐震強度があります。
つまり、震度6強~7の地震の1.5倍までは倒壊や崩壊しないレベルだということ。
住宅性能表示制度の中でももっとも耐震性が高いレベルです。
耐震性◎な「SE構法」とは?
優れた耐震性能を持つ構法のひとつに「SE構法」があります。
SE構法とは、注文住宅などで用いられる木造建築の工法の1つで、高い耐震性と開放的な空間を費用対効果高く両立できるのが特徴。
断熱性なども高めやすく、品質の高い住宅が実現できます。
柱と梁を剛接合することで強固な構造を作り上げるという工法ですが、これは鉄骨造やRC造では主流となっているもの。
歴史的な蓄積もあり、耐震性においてきわめて信頼性が高いと言えるでしょう。
鉄やコンクリートと違い、木という天然素材は均一な強度の材料確保や剛接合を実現させることが難しく、これまで木造住宅においてSE構法という発想はありませんでした。
しかし、接合部にSE金物を使うことで断面欠損や柱の引き抜き現象を防ぎ、高い耐震性能を獲得することに成功。
更に、筋交いや耐力壁を最小限に抑えることができるため、木造でも大きな吹き抜けや柱のない大開口が可能となったのです。
SE構法の構造躯体に使用する木材には、すべて「構造用集成材」が使われています。
「構造用集成材」とは、十分に乾燥され強度ごとに分類した「ラミナ」と呼ばれる木材を科学的に計算しながら張り合わせた「エンジニアリングウッド」のこと。
自然のままの木材は乾燥の度合いや強度がバラバラで分かりにくいのが難点でした。
しかし構造用集成材は含水率が低く、部材ごとの強度が表示されているため、どの部分にどの部材を採用するかを安心して決めることができます。
木材や接合する金物が高い強度を持つことは大きな要素ですが、SE構法が地震に強いと言える最大の理由は「構造計算」というシステムにあります。
構造計算とは、設計士がデザインした設計計画に対して、大きな地震や台風がきても建物が壊れないように、専門の構造設計士が多角的・数値的に計算をして部材や太さなどを決めていくこと。
木造住宅ではあまり聞き慣れない構造計算ですが、ビルやマンションのような鉄筋造や鉄筋コンクリート造の世界では常識的に行われています。
この構造計算、実は一般の木造住宅では法律で義務化されていません。
資格を持った建築士が仕様規定に基づいて設計していれば、構造計算は不要とされています。
SE構法は、この構造計算を必ず行った上で施工を進めるため、必要な強度をしっかり担保でき、高い耐震性を実現できるのです。
神戸でSE構法の家を手がけるホエールハウスでは、住宅の耐震性能について学べるセミナーを定期開催しています。
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本当に耐震性が高い家とはどのような家なのか詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にご参加ください。