SE構法で地震に強い家にできる仕組みとは?

SE構法はなぜ地震に強い家にできるのか?

SE構法とは?

SE構法のSEとは「Safety Engineering」の略語で、「工学的に安全」という意味。SE構法は木造の構法ですが、もともと木材は軽い上に、曲げる力・圧縮する力・引っ張る力にも強いという特徴があります。その木材に加えて部分的に鉄を取り入れることで、木と鉄の強みを両方持つ構造を実現したのがSE構法です。

1995年の阪神淡路大震災では、犠牲者の約90%が家屋の倒壊により亡くなりました。こうした現状を変えていきたいという思いから、1997年に誕生したのがSE構法。SE構法で建てられた家は、その後日本で起きた大震災において地震への強さが証明されています。
2011年に起きた東日本大震災では、津波の被害を受けてもSE構法の建物は流されることなく原型を留めました。また、2016年に起きた熊本地震では、震度7の地震が2回起きてもSE構法の家は構造躯体の損傷を生じていません。
今までSE構法で建てられてきた家は1万9千棟(2023年4月現在)ありますが、その中で地震によって倒壊した家はゼロ。SE構法にはこうした実例があるのはもちろん、その地震への強さを客観的に証明できる点も特徴です。

※参照:
株式会社エヌシーエヌ「耐震構法SE構法」SE構法とは https://www.ncn-se.co.jp/se/se_summary/103/

SE構法の耐震性が高い理由

構造用集成材を使用

一般的な木造住宅で使われる木材は自然のままのものを利用しており、乾燥具合により強度がバラバラであったり、反りやねじれが起こりやすかったりします。
しかし、SE構法で使われているのは強度が高く品質の安定した「構造用集成材」。
「構造用集成材」は強度ごとに分類した木材を科学的に貼り合わせてつくられているため、部材ごとの強度が明確です。同じ樹種の無垢材と比べると、1.6倍もの強度があるといわれています。

構造計算を取り入れている

「構造計算」とは、建物の安全性を確認するために行われる計算のこと。鉄骨造や鉄筋コンクリート造の一般的な住宅では構造計算が行われており、建物が地震や台風、積雪、津波などの力に対して安全であるよう適切な部材の太さを計算しています。
では木造住宅はどうなのかというと、建築基準法で2階建てまでの木造住宅は構造計算の対象外と定められており、構造計算が義務化されていないのです。

新築で建てる場合は、木造であっても最低限の耐震性をクリアしなければなりません。しかし、実際に構造計算を行ってその耐震性を証明しているわけではない、ということです。

そのような現状の中、SE構法では木造でありながら全棟に対して構造計算を行っています。
木造住宅の構造計算を行わないのは法律で義務化されていないというのも理由の1つですが、木材は品質にばらつきがあって計算が難しいという事情もあります。
SE構法は「構造用集成材」を用いることで構造計算を可能にしたのです。

柱と梁の接合部にSE金物を使用

木造の建築は柱に「ほぞ」という穴を開け、梁を差し込んで建てられますが、実はこの柱と梁の接合部が木造の弱点。住宅の柱は太くても12cm程度なので、そこに梁を差し込む穴をつくるとなると、残っている部分がかなり少なくなることは想像できるでしょう。穴が空いた木造の柱は、大きな地震によって梁との接合部が欠損しやすくなるのです。

SE構法では、柱と梁の接合部に高強度のSE金物を利用して接合部を強化。柱と梁の接合に必要な穴が少なくなり木材を傷めないため、高い耐震性を実現しています。

柱が基礎から抜けにくい構造

柱と基礎の連結部も、大きな地震の揺れで壊れやすい場所のひとつ。連結部が弱いと基礎から柱が抜けてしまうため、建物が損傷することは避けられません。
SE構法では「柱脚金物」という特殊な金物を基礎と柱部分に使用しており、連結部分は強固に連結されています。そのため、在来木造で使用されているホールダウン金物の実に5倍以上もの力を発揮。これにより、さらなる耐震性の向上を可能にしています。

ラーメン構造

SE構法では、鉄骨造やRC造に用いられている「ラーメン構造」を取り入れています。
「ラーメン構造」とは柱と梁によって頑丈な枠を形成し、建物を面で支える構造のこと。柱と梁を一体化させる「剛接合」によって外から大きな力が加わっても接合部が変形せず、地震にも耐える力が高まります。

ラーメン構造はもともと鉄やコンクリートのように強度計算できる部材を想定したものだったため、これまでは木造住宅には取り入れられてきませんでした。しかしSE構法は強度が明確に計算できるため、木造でのラーメン構造が可能になったのです。

耐力壁の強度が高い

耐力壁とは、垂直と水平からの力に抵抗できるような壁のこと。在来軸組工法による木造住宅では耐力壁として筋交い(※)や面材耐力壁(※)が一般的に利用されています。

※筋交い:柱と柱の間に入れる斜めの柱
※面材耐力壁:柱でできた枠に面材を釘で打ち付け、加わった力を壁全体に分散させる部材

一方、SE構法の耐力壁は在来軸組工法に比べて高い強度を持つ部材を使用。在来軸組工法では「JAS特類2級合板」が使われるところ、SE構法ではより強度に関する検査項目が多い「JAS特類1級合板」を使用し、釘もより太くなっています。これにより、在来軸組工法の耐力壁に比べて2倍以上の性能を実現しました。

スケルトン・インフィル

スケルトン・インフィルとは、建物のスケルトン(建物の骨格)とインフィル(建物の内装や間仕切り、設備)を分けて建築する手法のこと。SE構法はラーメン構造を取り入れているため、必要な耐力壁以外の柱や壁は在来の工法よりも少なくて済みます。
つまり、耐力壁以外の柱や壁を自由に入れ替えたり変更したりしても耐震性が低下することなく、地震への強さはそのままに可変性の高い家が実現できるのです。

SE構法の地震への強さの証明

SE構法は構造計算が可能なため、その数値を基準としている国などからの認定を受けることが可能。こうした認定は税金や補助金の条件になっている場合が多く、コスト面でのメリットにもなります。

耐震等級3の取得が可能

耐震等級とは、地震に対する建物の強さを示す指標のこと。耐震等級には1から3まであり、それぞれ以下のように定められています。

<耐震等級1>

震度6~7程度の地震に対して建物が倒壊・崩壊しない強さを持ち、国交省が定める建築基準法の最低限の基準

<耐震等級2>

耐震等級1の1.25倍の強度を持ち、学校や病院などの公共施設に求められる基準

<耐震等級3>

耐震等級1の1.5倍の強度を持ち、災害時の救護活動や復興の拠点になる施設に求められる基準

SE構法は、現在の最高等級である耐震等級3の取得が可能です。

長期優良住宅の認定が可能

長期優良住宅とは、長きにわたり良好な状態で住み続けられるための措置が講じられた住宅のこと。認定の基準には耐震性や劣化対策、省エネルギー性などが挙げられます。
長期優良住宅と認定されれば、住宅ローンの控除や地震保険料が割引などのさまざまな優遇を受けることが可能です。

2022年の10月には、長期優良住宅の認定に必要な耐震等級が2から3に引き上げられました(※)。SE構法であれば耐震等級3をクリアできるため、長期優良住宅の認定も受けやすいといえます。

※階数が2以下の木造建築物等で壁量計算によって取得している場合。構造計算によって取得する場合は耐震等級2以上。

性能保証制度を実施している

SE構法には、最長20年間の「SE住宅性能保証制度」があります。品質保証は研修を受け試験に合格したSE構法施工管理技士により実施。施工状況の写真やチェックシートにて評価した後に、「SE構法性能報告書」の提出を義務づけています。

「SE構法性能報告書」は、水平部材に1/120以上の傾斜、床や梁など通常荷重下で1/500以上のたわみ、柱壁の鉛直部材の1/120以上の傾斜がないかといった厳しい基準をクリアしていることを証明するもの。その上で、基礎や構造躯体、金物に起因する建物の損傷を保証しています。

※参照:
一般社団法人 住宅性能評価・表示協会「住宅性能表示制度について」地震などへの強さ https://www.hyoukakyoukai.or.jp/seido/shintiku/05-01.html
「長期優良住宅認定制度の概要について」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001597440.pdf
株式会社エヌシーエヌ「耐震工法SE構法」支援体制(保証・サポート事業)https://www.ncn-se.co.jp/se_business/support/

耐震性だけではない!SE構法のメリット

SE構法は間取りの自由度が高い

「ラーメン構造」が取り入れられていたり「スケルトン・インフィル」の手法が取られたりしているSE構法は、間取りの自由度が高いのがメリット。実際にどのような間取りが実現可能なのか見ていきましょう。

大空間や大開口

SE構法はラーメン構造を取り入れているため、柱や壁が少なくても耐震性の高い家を建てることが可能。そのため、「広いリビング」「仕切りのないワンルーム」「大きな窓をつける」「吹き抜け」などの大空間・大開口の間取りが実現できます。

スキップフロア

スキップフロアとは、床に高さを出して1階と2階の間につくる中間階のこと。スキップフロアには「空間を広く見せられる」「段差部分に収納スペースの確保ができる」「おしゃれな空間になる」「家族がどこにいても存在が感じられる」といった点がメリットです。
ですが、スキップフロアは床の高さが異なるため地震時の力の伝わり方が複雑になり、それによって耐震性の弱い家になってしまう場合も。
SE構法では地震力の伝わり方もしっかり検証しながら設計するため、スキップフロアがあっても耐震性の高い家が実現できます。

将来的なリフォーム・リノベーション

SE構法は構造躯体と内装や設備を分けた「スケルトン・インフィル」を取り入れているため、柔軟な間取りの変更が可能。お子さんが独立した後の子供部屋を他の部屋と繋げてワンルームにするなど、家族構成やライフスタイルの変化に合わせて自由にリフォームやリノベーションが可能です。

SE構法は耐震性を保ったまま間取りが変えられるため、長く住み続けたり住み継いだりできるのはもちろん、家の資産価値を高く維持できるのもメリットです。

SE構法で「地震に強い・希望の間取り」を叶えた事例

ホエールハウスは神戸に拠点を置き、兵庫県では唯一、全棟をSE構法で建てている注文住宅会社。数多くの施工実績の中から、SE構法だからこそ実現できたという間取りやデザインの事例をご紹介します。

<事例1>

閑静な住宅街に建てられた家には、アプローチを隠せる大きなL型フレームの屋根がついています。この屋根は、SE構法だからこそできる技。他にも、大谷石が天井まで伸びる吹き抜けリビングを取り入れ、壁が浮遊しているようなおしゃれな空間を演出しています。また、玄関は美術館のような広い空間を実現しました。

L型フレームの屋根の事例

<事例2>

田畑の続く道の先に建つスタイリッシュな家では、玄関を入ってすぐに土間スペースを設け、いつでもアウトドア気分を味わうことが可能。大きく跳ねだした軒により夏の日差しを遮り、大きな窓から外の景色をのんびり眺められます。家中をつなぐ吹き抜けリビングがあるため、いつでも家族のつながりを感じられる暖かな家を実現しました。

吹き抜けリビングがある家の事例

ホエールハウスのホームページでは、SE構法だからこそできるおしゃれで開放的な事例を、他にもたくさん紹介しています。気になる方はぜひチェックしてみてください。

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