戸建て VS マンション、地震に強い建物はどっち?耐震基準や耐震等級について解説

過去の震災から、戸建てとマンションの地震への強さを分析

過去の震災に関する統計からは、戸建てとマンションの倒壊率を直接比較しているデータは見つかりませんでした。しかし、戸建てに多い木造とマンションに多い鉄骨造や鉄筋コンクリート造の倒壊に関する報告は挙げられています。このデータを参考に、戸建てとマンションの地震への強さを分析していきます。

阪神淡路大震災の建物倒壊について

阪神淡路大震災によって全倒壊・半壊率した建物のうち、約70%が木造建築物。鉄筋コンクリート造は約20%、鉄骨造は約40%となっています。
木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造のいずれも、全壊・半壊などの大きな被害を受けた建物の多くは建築年代が古いものでした。また、木造の被害が大きかった理由としては、シロアリの食害や木材の腐朽などによる建築物の劣化の影響も大きいと考えられます。
一方、1981年以降の新耐震基準が適用された建物については、構造によらず被害は小規模に抑まっていました。

東日本大震災の建物倒壊について

東日本大震災による木造建物の被害は広範囲にて確認されています。その中でも特に大きな被害を受けた建物の多くは建築年代が古く、老朽化も進んでいました。
一方、鉄筋コンクリート造・鉄骨造において、1981年以降の新耐震基準が適用されている、または旧基準だが耐震補強がされている建物の被害は小さく抑えられており、倒壊や大破などの大きな被害を受けた建物の多くは耐震補強がされておらず建築年代が古いものでした。

熊本地震の建物倒壊について

熊本地震についても、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造のいずれも建築年代が新しい建物ほど地震の被害を受けた割合が少なかったことが分かっています。
倒壊率は木造が15.2%と最も高く、鉄骨造は3.6%、鉄筋コンクリート造は3.8%でした。
倒壊率が最も高かった木造建築物の旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準それぞれの倒壊率を比較すると、28.2%・8.7%・2.2%と大きく差があり、建築年代による耐震性の違いが表れています。

※参照
芦屋市 「阪神・淡路大震災 芦屋の記録 建築物の被害と復旧」 https://www.city.ashiya.lg.jp/bousai/shinsai/gaikyou.html
総務省消防庁「東日本大震災記録集  第3章 災害の概要」 https://www.fdma.go.jp/disaster/higashinihon/item/higashinihon001_13_03-03-01.pdf
国土交通省 熊本地震における建築物被害の原因分析をおこなう委員会 報告書 「3.被害状況・被害要因等の分析」 https://www.mlit.go.jp/common/001287789.pdf

戸建てとマンションの地震への強さを比較する時に見るべきポイント

過去の震災の倒壊率からは家の構造や建築年代などによる耐震性の違いが見受けられましたが、戸建てとマンションどちらの耐震性が高いかは一概に言えません。
倒壊に関する報告資料からは、戸建てかマンションかの違いよりも、耐震基準・耐震等級・建物構造によって建物の耐震性が異なってくるということが読み取れます。

耐震基準

建築基準法で定められている耐震基準は、これまで大きな震災を経て2度改定されています。
旧耐震基準・新耐震基準・2000年基準の違いを見て行きましょう。

・旧耐震基準
1950年の施行から1981年5月31日以前に確認申請が受理された建物に適用されている耐震基準を指します。震度5強程度の揺れでも建物が倒壊せず、補修すれば生活できることを基準としています。

・新耐震基準
1981年6月1日以降に確認申請が受理された建物に適用されている耐震基準です。震度5強程度までの地震ではほとんど損傷を受けないことに加え、震度6強から7程度の揺れでも倒壊せず、人命に危害を及ぼすレベルの被害が生じないことを基準としています。
改正のきっかけは、1978年に発生した宮城県沖地震です。震度5程度の揺れにより、現在の仙台市域で住宅の全半壊が4385戸、一部損壊が86010戸と想定以上の大きな被害が生じたこの地震を教訓に、今までの耐震基準が見直されました。

・2000年基準
木造建築物を対象に改正された基準です。地盤の強さに応じた基礎(建物を支えるコンクリート部分)の設計、梁(屋根や上階の床の重さを支える材木)や柱などの接合部の固定に関する規定、耐力壁(地震の横揺れのような水平方向にかかる力に耐えるための壁)の配置バランスの規定が盛り込まれました。
この基準は、阪神淡路大震災での被害によって洗い出された新耐震基準における木造の弱点を補強しています。

建物構造

建物の耐震性を高める構造には「耐震構造」「制震構造」「免震構造」があります。耐震構造をベースに各構造を組み合わせることで、建物の耐震性を高めることができます。

・耐震構造
地震の揺れに対抗するため、建物自体を頑丈にする構造を指します。筋交いを入れたり、柱と土台・梁のような部材同士の接合部を金具で補強したりすることで揺れに耐えられるようにしています。
しかし、建物の揺れは直接伝わるため、揺れによる建物へのダメージは免れません。また、揺れによるダメージが限界を超えると建物の損傷や倒壊につながる恐れがあります。

・免震構造
建物と地盤との間に部材を設置することで、建物に直接揺れが伝わらないように設計されている構造を指します。大きな地震が発生しても揺れにくいのが特徴で、家具の転倒による被害も抑えられます。
しかし、設置に大きなコストが生じるうえ、定期的なメンテナンスが必要になります。戸建て住宅よりもマンションのような大規模な集合住宅で採用されています。

・制震構造
建物内に地震の揺れを吸収する部材を取り付け、揺れを小さくする構造を指します。揺れの吸収は免震構造ほどではありませんが、揺れを抑えることで建物へのダメージを少なくして損傷や倒壊を防ぎます。
設置・維持コストは免震構造と比べると安く抑えられますが、耐震構造よりは高額になります。また、間取りが制限される場合があります。

耐震等級

耐震性の指標の1つである耐震等級は3段階で表示され、数字が大きくなるほど耐震性が高くなります。

・耐震等級1
震度6強から7程度の揺れでも倒壊せず、震度5強程度までの地震ではほとんど損傷しない耐震性を満たすことが耐震等級1の条件。これは、新耐震基準と同等の耐震性能が備わっていることを示しています。
震度7の揺れが2回起きた熊本地震では等級1の建物の60.1%は無被害でしたが、6.3%は倒壊等の大きな被害を受けました。被害を最小限に抑えられる耐震性能を有していますが、倒壊のような人命に関わる被害を完全に無くすことはできません。

・耐震等級2
耐震等級2には、耐震等級1で想定されている1.25倍の地震力がかかっても倒壊・損傷しない耐震性能が求められており、病院や学校などの建物と同等の強度を持っています。
耐震等級1の建物が震度7の地震で倒壊する確率が28%なのに対して耐震等級2は7.9%となっており、等級を上げることで大きく倒壊率を減らせます。

・耐震等級3
耐震等級1で想定されている1.5倍の地震力がかかっても倒壊・損傷しない耐震性能が求められるのが耐震等級3です。
熊本地震では耐震等級3の建物の87.5%は無被害で、残りの12.5%は軽微な被害に抑えられていました。
耐震等級3の建物が震度7の地震で倒壊する確率は3.5%となり、耐震等級1の建物の倒壊率28%と比べて約8分の1の値に抑えられます。

地震に強い家は、“戸建てかマンションか”ではなく「耐震等級」で選ぼう

耐震等級が大事なのはなぜ?

震等級の中で一番ランクが下の耐震等級1は新耐震基準を満たしており、最低限の耐震性を保証しています。一方、耐震等級2,3の建物は新耐震基準で想定されている地震を超える力に対しても倒壊したり建物への損傷を受けたりしない構造に設計されています。
また、耐震等級2,3の認定を受けるには専門機関の審査に合格する必要があるため、耐震性の高さが客観的に証明されているのも安心できるポイントです。

耐震等級3を誇る構法とは

耐震等級3を誇る建築技術の1つである「SE構法」。
SE構法が一般的な木造建築と異なるのは、構造計算をしていることです。建物にかかる力を計算し、建物・基礎・地盤の強さを数値化しているため、計算結果に基づいた高い耐震性を実現しています。
また、建物の建築に使う部材すべての強度の数値が構造計算で使用した部材と同じ値になっているのも高い耐震性の秘訣。使う部材の性能が安定しているため、数値どおりの耐震性を保証できるのです。
同じ耐震等級3の建物でも、SE構法で用いられる構造計算と一般的な木造建築で用いられえる壁量計算では耐震性に違いがあり、壁量計算による耐震等級3の耐震性は新耐震基準の1.91倍、構造計算によるものは2.44倍。SE構法の耐震性がいかに高いかが窺えます。

被災地で全棟「耐震等級3」の家を建て続ける工務店

ホエールハウスは、兵庫県で唯一全棟にSE構法を採用している工務店です。
全棟に対してSE構法を用いた家づくりをしているのは、「東日本大震災や熊本地震での倒壊ゼロ」という確かな実績があるから。「根拠のある強さ」に基づいた高い耐震性で、安心の住まいを提供したいと考えています。
住宅の耐震性について学びたい方のために、無料の耐震セミナーも開催しています。興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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