地震に強い家を建てるための地盤調査や改良について解説

地震に強い家を支える「地盤」とは?

家を支える「地盤」は家の性能と同じくらい(場合によってはそれ以上に)重要です。いくら地震に強い家であったとしても、その家を支える地盤が弱ければ、耐震や免震といった家の性能の意味がなくなってしまうからです。
ここでは、家を支える「地盤」について解説していきます。

地盤とは何を指すのか

地盤とは建物の安全性に直接影響を与える地表の地質のことで、工事の対象となる部分を示すのが一般的です。
範囲としては、地表から深さ100mくらいまでを指します。場所によって異なりますが、多くの場合、地盤は土や岩や砂などで形成されています。
また、切土・盛土・埋立地など、人工的に造られた人工地盤もあります。

地震に強い地盤と弱い地盤

地盤によって、地震に強いものと弱いものがあります。
地震に弱い地盤はおもに、切土・盛土・埋立地などです。

〈切土、盛土〉

山の斜面などに家を建てる場合には、土地を平らに造成する必要があります。その際に斜面を削るのが切土、土を盛るのが盛土です。

〈埋立地〉

埋め立てられた時期によっても地盤の強さは変わりますが、埋立地は基本的に地震に弱い地盤。地震が起きた際の液状化(地盤が強い衝撃を受けて土の粒子がバラバラになり、ドロドロの液体のような状態になる現象)のリスクも高いとされています。

地震に強い地盤とは、言い換えると「硬く締まりがある地盤」。このような地盤は、地震が起きた際に揺れが伝わりにくいという性質があります。

例えば、歴史的に古くから人が住んでいる土地は「災害による被害が歴史的に見て少なかったためずっと人が住み続けている」と考えられるため、地震に強い地盤である可能性が高いといえます。

地盤の種類

地盤はその硬さによって「硬質地盤」と「軟弱地盤」の2つに分けられます。

硬質地盤は地震の揺れに強く、家を建てるのに向いていますが、軟弱地盤は対策なしで建物を建てると傾いたり沈下したりする恐れがあります。
軟弱地盤に建築する際には、地盤に十分な強度を持たせるため「土地改良」の工事が必要です。

続いて、硬度以外の地盤の分類について解説します。

・岩盤

岩盤とは、長い歴史の中で自然につくられた岩石で形成される地盤のこと。家を建築するには十分な強度があるといえます。

・沖積層(ちゅうせきそう)

最終氷期以降 (約18,000年前から現在までの間) に堆積した地層のこと。沖積層を構成する地層は比較的新しいため強度が低い場合が多く、沖積層の上に家をつくる際は地盤調査をする必要があります。

・洪積層(こうせきそう)

最終氷期(約18,000年前)以前に堆積した地層のこと。洪積層の上に堆積する沖積層の重さによって締め固められるため強度が高く、建物を建築するのに向いた地盤といえます。

・人工地盤

もともと海や川だったところや傾斜地を埋立や切土・盛土などによって人工的に造り、土地を活用できるようにした地盤のこと。長い時間をかけて自然に形成された地盤と比べると、災害リスクが高いとされています。

地震に強い地盤の選び方

土地探しをする際には、その土地の地盤が地震に強いかどうか確認するようにしましょう。
ここでは、地震に強い地盤の選び方を解説します。

古地図を見る

その土地の歴史を調べることは、地震に強い地盤を選ぶ有効な手段になります。
土地の歴史を知る手掛かりになるのが「古地図」。古地図を見れば、その地域の昔の姿が分かります。
例えば、かつて川や田んぼだった地域の地盤は緩い可能性が高いもの。また、日本の都市部は埋め立てによって造られた土地が思っている以上に多く存在することも古地図を見れば分かります。実際、今の皇居周辺も江戸時代以前は湿地帯でしたが、家康が海を埋め立て、川の流れを変えて運河や濠をつくったのです。
地震の際によく耳にする液状化は埋立地などの水分を多く含んだ土地で起こりやすいとされているため、希望する土地や物件が埋立地であるかどうかは注意深く確認しておきましょう。

町名を確認する

その土地の歴史を知る手段として、町名を確認する方法もあります。
町名に以下のような「水に関する文字」が入っている場合、その土地は川や沼や水田などの水に関連する特徴を持つ地域だった可能性が高いといえるのです。

川、池、津、湧、浅、深、田、谷、江、亀、沢、浦、浜、洲、釜、牛、蛇、淵、灘、沼、渋

町名は歴史を経て変わっているケースがあるため、過去の町名も確認するようにしましょう。
法務局の旧土地台帳から過去の町名を調べることができます。無料で閲覧できるので、ぜひ確認してみてください。

過去の災害歴を知る

地震に強い地盤を探すには、過去に災害があったかどうかも調べておきましょう。過去に大きな災害があった地域は、今まで災害がなかった地域に比べると災害リスクが高いからです。
例えば、川の氾濫や土砂災害のニュースを思い出してみてください。何度も同じ場所で起きていると感じたことはありませんか?災害は、同じ地域で繰り返し起こるケースが多いのです。

過去の災害については、下記の方法で調べられます。

  • 市役所や図書館、資料館で郷土史を調べる
  • 地域の記念碑から調べる
  • その土地で古くから暮らしている近隣住民に聞く

記念碑は国土地理院の「自然災害伝承碑(https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/denshouhi.html)」が参考になります。

「ハザードマップ」「ゆれやすさマップ」を見る

ハザードマップとは、自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図のこと。各市町村で公開されており、洪水や土砂災害などの危険区域を確認できます。

ハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)または「ハザードマップ 〇〇市」と検索すれば確認できます。

ゆれやすさマップとは、地盤の状況とそこで起こりうる地震の両面から地域の揺れやすさを震度として評価し、 住民自らがその居住地を認識可能な縮尺で詳細に表現したもの。

全国マップ(https://www.jjjnet.com/jishin/jishin_yure_map.html)または「ゆれやすさマップ 〇〇市」と検索すると確認できます。

埋立地については、国土地理院の『ベクトルタイル「地形分類(人工地形)」』(https://maps.gsi.go.jp/#15/35.680969/139.767358/&base=std&ls=std%7Cexperimental_landformclassification1%7Cexperimental_landformclassification2&disp=111&lcd=experimental_landformclassification2&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f0&d=vl)が参考になります。

地震に強い地盤をつくるには

地震に強い地盤をつくる方法の手順は、1.地盤調査をする 2.地盤改良工事をする 3.堅牢な土台を作る(基礎工事) の3ステップです。

地盤調査をする

従来からある一般的な8種類の地盤調査方法と、比較的新しい調査方法である「微動探査」について解説します。

スウェーデン式サウンディング試験

戸建住宅の地盤調査方法において最も一般的で普及しているのがスウェーデン式サウンディング試験。SS試験・SWS試験とも呼ばれます。
地面に鉄の棒を挿していくことで地盤の状況を測定。地耐力(地面が建物を支える事ができる強さ)や不同沈下(地盤のゆがみなどによって建物が傾いたり地中に沈んだりする現象)のリスクを判定するのに役立ちます。
土質はおおよそにしかわかりませんが、費用が安い・期間が短いといったメリットがあります。

ボーリング調査(標準貫入試験)

ボーリング調査は、地面に穴をあけることで地盤の支持力・土質・地層構成・地下水位などを求める調査方法です。また、液状化の判定や土壌汚染調査も可能。
主な用途はマンションなどの大型の建築物です。

平板載荷試験

実際の条件に近い荷重を地盤にかけることで、地盤の強度を測る調査方法です。
比較的短時間で調査ができるメリットがある一方、浅い部分の地盤しか調べられない・調査した地点(直径30㎝程度)の強さしかわからないといったデメリットがあります。
主な用途は道路や擁壁です。

液状化判定

液状化の危険性を判定する方法で、下記のような流れで進められます。

  1. 液状化マップ(国土交通省等)や地形区分で液状化の可能性があるかを判定する
  2. 1の結果、液状化の危険性がある場合は、ボーリング調査などによって土を採取し、高精度の判定をする

土質試験

採取した土から地盤の状態や性質を調査するための試験。地盤の支持力予測による地盤沈下のリスクや液状化リスクを求めることかできます。

孔内水平載荷試験・現場透水試験

孔内水平載荷試験は地盤の水平方向の変形のしやすさや強度などを、現場透水試験は地盤をどれくらいの速さで水が浸透できるかを調べる試験のこと。これらの試験結果は、地盤改良の設計に用いられます。

土壌汚染調査

土壌汚染調査は表層土壌や土壌ガス、地下水などを採取し、その成分を分析する調査のこと。土壌汚染が判明した場合は、除去や浄化などの対策が必要になります。

残土(建設発生土)調査

残土調査は、建築工事などで発生した処分すべき残土を調査・分析し、「残土分析結果証明書」を作成するための調査です。
残土を処分するには、この残土分析結果証明書を各自治体や民間の処分場に提出する必要があります。

微動探査

従来の地盤調査が地盤の強度を測るための試験であるのに対し、微動探査は地盤の揺れやすさを測るための試験となっています。
地盤の固さと揺れやすさは必ずしも一致しないため、地震に対する安全性を確認する上で重要な指標となります。

地盤改良工事をする

地盤調査の結果、その土地が軟弱地盤と判定された場合には地盤改良工事が必要となります。
また、埋め立て地や切土・盛土でつくられた土地など、液状化や地盤沈下、斜面崩壊、地滑りなどのリスクがある土地も地盤改良の対象になります。

表層改良工法

地表から2mまでの軟弱地盤部分を掘削し、固化材(土を固めるもの)を土に混ぜて締め固める工法。
比較的安くできるメリットがある一方、勾配の厳しい土地や深い地盤の施工ができない・施工者の技術により仕上がりにムラが出るなどのデメリットがあります。

柱状改良工法

軟弱地盤が2m~8mにある場合に用いられることが多い工法。土の中にコンクリートの柱をつくることで地盤を安定させます。
デメリットとしては、施工後の原状回復が難しく、仮に土地を売却するとなった際には価格が下がる要因になる可能性があることが挙げられます。

鋼管杭工法

軟弱地盤が8m以上の深いところにある場合に用いられることが多い工法。土の中に鋼管杭を打ち込む事で地盤を安定させます。地中30mまでの地盤補強が可能で、他の工法と比較しても地盤の強度が高くなります。
小さな重機でも施工が可能なので、狭小地で鉄筋3階建ての家を検討している場合などにも有効な工法ですが、他の工法と比べると価格は高くなります。

既成コンクリートパイル工法

鋼管杭工法と同様、軟弱地盤が8m以上の深いところにある場合に用いられることが多い工法。鋼管杭の代わりにコンクリートの既成パイルを圧入することで、地盤を補強します。

堅牢な土台を作る(基礎工事)

家の土台となる基礎は家が建ってしまえば見ることはできませんが、家の耐久性を左右する重要な要素です。
ここでは、広く普及している「布基礎」と「ベタ基礎」について解説していきます。

ベタ基礎

ベタ基礎は、面で家の重さを支える構造となっています。
基礎となる部分全体が分厚い鉄筋コンクリートで覆われ「面」で家の重さを支えるため、耐震性が高いのが特徴。また、分厚い鉄筋コンクリートによって地面からの湿気やシロアリの被害を防ぎやすいというメリットがあります。
デメリットは、後述する布基礎と比べてコストが高くなる点です。

布基礎

布基礎とは、点と線で家の重さを支える構造となっています。
家の柱や壁の下に鉄筋コンクリートの基礎が入り、その他の部分には薄い防湿用のコンクリートが敷き詰められます。
メリットは、コストが抑えられる点。ベタ基礎と比べたときのデメリットとしては、・震性が低い・湿気やシロアリの被害を受けやすいといった点があげられます。

地盤だけじゃない!地震に強い家の建て方

地震に強い家にしたいなら、考慮すべきは地盤だけではありません。当然、家そのものの地震に対する強さも重要になります。
続いては、地震に強い家の工法や家の耐震性の基準について解説します。

家の耐震性の基準とは

一般の消費者が耐震性能をわかりやすく判断するために指標として用いられているのが耐震等級という基準。耐震等級1〜耐震等級3までの3段階に分けられています。

耐震等級1は、建物に備わっているべき最低限の耐震性能を満たすもの。「数百年に一度起こる地震でも倒壊・崩壊しない強度」を備えるよう構造計算されています。つまり、倒壊や崩壊はしないが損傷を受ける可能性はあるということ。
耐震等級2と3はそれぞれ耐震等級1の1.25倍、1.5倍の地震に耐える強度とされています。
これまでの大地震後の調査では、最高等級である耐震等級3の家が余震を含む複数の大地震に対するリスクを大幅に軽減させることが明らかになっています。

地震に強い家の工法とは

家を建築する際に使われる代表的な8つの工法について紹介します。
前提として、地震対策には耐震・免震・制震の3種類があることは覚えておくと良いでしょう。

  • 耐震…家の強度をあげることによって地震に耐える工法
  • 免震…家と基礎を切り離すことによって、地震の揺れが家に伝わらないようにする工法
  • 制震…家の一部に可動部分を設けておくことで、揺れを吸収する工法

木造軸組工法

木の柱と梁を骨組みに家を組み立てていく工法で、日本では古来から用いられてきました。そのため、在来工法とも呼ばれます。
今も一般住宅の約8割が木造軸組工法で建設されていると言われていて、大手ハウスメーカー以外のいわゆる「地域の工務店」の多くが木造軸組工法を採用しています。

2×4工法

2インチ×4インチ(ツーバイフォー)の太さの角材と合板を接合して「面」を作り、この面を壁・床・天井にすることでボックス状の空間をつくっていく工法です。
面で構成されているため、気密性・断熱性・耐震性に優れている点がメリットです。

軽量鉄骨造

軽量鉄骨を骨組みとした工法。木造軸組工法と同じような作りで、木の柱と梁の代わりに6mm未満の鉄骨を採用しています。
大きな窓の設置や広い空間づくりが得意というメリットがある一方、設計の自由度が低い・断熱性が低く結露もしやすい・防音性が低い・基本的に施工したメーカーしかリフォームができないといったデメリットがあります。

重量鉄骨造

軽量鉄骨造が6mm未満の鉄骨を使っているのに対し、6mm以上の鉄骨を採用しているのが重量鉄骨造です。
中高層マンションにも用いられる工法で、大きな窓が設置可能・広い空間づくりが可能・屋上の有効活用(屋上緑化など)に向いているといった強みがあります。
ただし、軽量鉄骨造と同様、断熱性が低く結露しやすいというのが弱点。一般的な木造住宅よりも頑丈な基礎が必要になる点も要注意です。

鉄筋コンクリート(RC)造

名前のとおり、鉄筋コンクリートで造る工法です。

  • 壁が一体で隙間が生じにくい構造のため、断熱性が高い
  • 縦横どちらの圧力に対しても強いため、耐震性が高い
  • 熱に強い素材のため耐火性が高い(火災保険料も一般木造住宅の1/3程度に抑えられる)
  • 強度が高く円形や曲線も可能な素材のため、デザインの自由度が高い
  • 劣化しにくい性質のため、メンテナンスの手間がかかりにくい

このように多くのメリットがありますが、コストが高くなる、結露・カビが発生しやすい、経年による汚れが目立ちやすいといったデメリットもあります。

木質系プレハブ工法

工場で作った断熱材や下地材の入った木質パネルを現場で組み立てていく工法で、耐震性・気密性・断熱性・遮音性に優れています。
現場では工場で生産されたパネルを組み立てるだけなので、品質にバラつきが少なく、工期を短くできるといったメリットがあります。

コンクリート系プレハブ工法

木質系プレハブに対し、鉄筋コンクリートのパネルを採用しているのがコンクリート系プレハブ工法。木質系プレハブ工法と同様、耐震性・気密性・断熱性・遮音性に優れている点、安定した品質と短い工期といったメリットがあります。

ユニット系プレハブ工法

ユニットとは部屋のこと。つまり、箱型の部屋を工場で作り、建築現場で組み立てていく工法を指します。
キッチンやトイレ、お風呂などの住宅設備や室内の造作などもあらかじめ工場でつくられるため工程のほとんどが工場で済み、現場での作業が少ないのが特徴。他のプレハブ工法よりも更に短い工期になります。
注意点としては、ユニットを運ぶ広い道路やクレーン車が動ける広いスペースが必要な点。また、「箱型」のユニットが基本になるので、設計の自由度はどうしても低くなります。

耐震基準3のSE構法に注目

木造軸組工法で建築する際の技術として、大型木造建築物の技術を住宅に応用するために開発された「SE構法」が注目を集めています。

SE構法の特徴は、独自に開発したSE金物と構造用集成材を使うことで、高い耐震性能を実現できる点、また、全棟で構造計算を行うことで、最高等級である「耐震等級3」を実現できるといった点にあります。
高い耐震性能と建材の強度によって、木造では実現し辛いといわれている大きな吹き抜けや柱のない大開口が可能になることもメリットです。

神戸の住宅会社・WHALE HOUSEでは、そんなSE構法をすべての家に採用しています。

「家」は多くの人にとって、人生で一番高い買い物。WHALE HOUSEは「科学的に根拠のある強さでお客様に安心できる住まいをご提供したい」という想いから、構造計算を行い確かな安全性を証明できるSE構法を全棟に取り入れているのです。

  • 地震に強い家づくりについて詳しく知りたい
  • 家を建てるのはまだ先だけど、家族を守る家づくりについて今から学んでおきたい

そんな方は、ぜひWHALE HOUSEが定期的に開催している「耐震セミナー」に参加してみてください。新しい発見や家づくりに役立つヒントが見つかるはず。参加費はもちろん無料です。

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