木造では地震に強い家は建てられない?
木材は鉄やコンクリートより弱い?実験データを紹介
木材の耐久性とは、実際どの程度でしょうか。
木材・鉄・コンクリートの「圧縮に対する強さ」「引っ張りに対する強さ」「曲げに対する強さ」といった耐久性を比較した実験データによると、木材は、圧縮に対する強さでは鉄の約2倍・コンクリートの約9.5倍。引っ張りの強さは鉄の約4倍・コンクリートの225倍。曲げに対する強さは鉄の約15倍・コンクリートの約400倍あることが分かりました。
木材は柔らかく加工がしやすいため耐久性が低いイメージがあるかもしれませんが、実はさまざまな力に対して高い耐久性を持っているのです。
さらに、地震の時は建物の重さが重いほど大きく揺れるため、同じ大きさの建物で比べると重さの軽い木材の揺れが一番小さくなるというのも、地震に対する耐久性の高さを表す特徴のひとつです。
木造で地震に強い家を建てるポイント
木造で地震に強い家を建てるポイントとして、「耐震等級」「耐震・免震・制震」「地盤調査・基礎工事」の3つがあります。
耐震等級
耐震等級とは地震に対する建物の強さを示す指標のこと。「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく「住宅性能表示制度」により定められており、等級には1から3まであります。
耐震等級1は、建築基準法でも定められている日本の建物における最低限の基準。建物が震度6~7程度の地震に対して倒壊・崩壊しない強さがあることが求められます。耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の強度、耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の強度があるため、地震に強い家を建てるなら耐震等級を高めるのがポイントのひとつです。
耐震・免震・制震
地震に対応する構造には、耐震・免震・制震の3つがあります。それぞれの違いを把握して取り入れてみましょう。
<耐震>
耐震とは、建物の強度を高めて地震の揺れに耐えられるようにする構造のこと。壁に筋交い(柱と柱の間に斜めに入れた耐震性を高める部材)を入れたり、接合部に金属などを用いたりして建物を強くします。建設コストが安く、設計の自由度が高いのがメリット。しかし地震の揺れがそのまま伝わるため、大きな地震の場合は建物の損傷・食器類の飛散・家具の転倒が起こりやすいのがデメリットです。また、階数が上がるほど揺れが大きくなります。
<免震>
免震とは、建物と基礎の間に地震の力をやわらげる「免震装置」を設置する構造のこと。免震装置が地震の揺れを吸収するため、建物の損傷や家具の転倒などを防止しやすいとされます。横揺れには強いものの、縦揺れや強風には効果が出にくいのがデメリット。上から下の階まで大きくゆっくりと揺れるのが特徴で、地表面ほどの揺れはありません。
<制震>
制震とは、建物の揺れを逃す構造のこと。建物には「制震装置」が組み込まれています。地震時に制震装置が建物の代わりに変形するため、構造物自体の変形や損傷防ぐことが可能。建物の損傷は抑えられますが、揺れはあるため食器類が飛散したり、家具が倒れたりする可能性はあります。メンテナンスがしやすく、強風による揺れにも効果がある点もメリットです。上階ほど揺れは抑えられますが、地表面の揺れより小さくなることはありません。
地盤調査・基礎工事
いくら地震に強い家を建てたとしても、土地の地盤が悪ければ地盤沈下や液状化現象などによって建物が倒壊する危険性は高くなります。そのため、地盤調査によりその土地に建物を建てても安全なのか、どのような改良が必要なのかを見定めることが大切。地盤調査は平成12年以降、建築基準法により義務化されているので、調査で分かった地盤の特性に合わせた施工が行われているのかもポイントです。
また、建物をのせる土台部分に当たる「基礎」も重要。基礎工事にはベタ基礎と布基礎の2つの方法があります。
- ベタ基礎…鉄筋を入れたコンクリートにより土台と床一面を一体化し、家の重みを支える工法。面で支えられるため荷重を分散でき、耐震性が高い土台をつくれます。
- 布基礎…地盤がしっかりしている土地で使われ、地面にコンクリートの柱を埋め込んで家を点で支える工法のこと。ベタ基礎よりも材料の使用量が少ないためコスト削減が可能ですが、家を支える部分の面積が少なく、コンクリートの厚さも薄いため耐震性は劣ります。
木材は火災にも強い
木材は火によって燃えますが、一気に燃え尽きてしまうのではなく、焼かれることで木の表面が黒く炭化します。この炭化層は熱が伝わりにくく、燃えるのに必要な酸素も遮断するため、太い木材の場合は炭化層によって内部が燃焼するまでの時間を稼ぐことが可能です。
鉄は火にさらされてから5分で強度は約50%になり、10分経過すると約10%まで低下しますが、対する木材は10分で80%、20分でも45%の強度が保たれます。
耐震性などを比較!コンクリート造と木造の違いとは?
家の構造については建材によっても違い、それぞれ特徴があります。ここでは、代表的な家の構造の耐用年数や遮音性、耐震性などの特徴を比較してみました。
RC造(鉄筋コンクリート造)
RC造(鉄筋コンクリート造)とは、鉄筋とコンクリートを用いた工法のこと。鉄筋でできた枠にコンクリートを流し込んだ素材を用います。引っ張る力に強い鉄と、圧縮に強いコンクリートのいいとこ取りをした工法です。
コンクリートと鉄の組み合わせにより強度の高い住宅を建てることができ、耐震性や耐久性に優れているのが特徴です。RC造の耐用年数は47年。遮音性は遮音等級L-50(※)であり、子どもの泣き声や走り回る音は少し聞こえるけれど、テレビやシャワー音はほぼ聞こえない程度とされています。
ただし、コンクリートには温まりにくく冷めにくい・湿気が抜けにくいという特徴があり、部屋の温度調整が難しく、結露やカビが発生しやすい点がデメリットです。
※遮音等級…建物の遮音性能のレベルを示す指標で、数字が少ないほど遮音性が高い
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)とは、SR造の鉄筋とコンクリート以外に鉄骨を支柱として利用した工法のこと。RC造の特徴である耐久性にプラスして、鉄骨のしなやかさが加わります。また、RC造と比較して耐震性や耐火性能がより高いのも魅力のひとつ。SRC造は性能が高いため、主に高層マンションや大型のオフィスビルに利用されます。
耐用年数はRC造と同じく47年。遮音等級はL-40で、子どもの泣き声・走り回る音はかすかに聞こえる程度です。
工程が複雑なため、工期が長期化する点やコストがかかる点がデメリット。設計の自由度も高くはありません。
S造(鉄骨造)
S造(鉄骨造)は、構造に鉄骨を使う工法。鋼鉄の厚みが6mm未満のものを「軽量鉄骨構造」といい、ブレース構造(※)が多く採用されています。「重鉄骨構造」は鋼鉄の厚みが6mm以上の構造のこと。重鉄骨構造ではラーメン構造(※)が多く採用されています。
※ブレース構造…柱と梁の間にブレース(斜め部材)が入った構造
※ラーメン構造…柱と梁を溶接などで一体化させることで、強靭な枠を形成した構造
鉄骨にはしなりがあり地震のエネルギーを吸収してくれるため、倒壊しにくい・倒壊までに時間がかかるといった特徴があります。
S造の耐用年数は「重鉄骨構造」は34年、「軽量鉄骨構造」は肉厚が3mm未満の場合19年、3mm以上4mm未満の場合は27年です。 S造は遮音性が低いのがデメリットで、重鉄骨構造の遮音等級L-60は足音やドアの開閉音・振動を伴う音が聞こえる、上階の歩行音が聞こえる程度の遮音性です。「軽量鉄骨構造」の遮音等級はL-65で、重量鉄骨よりもさらに遮音性が低くなります。
木造
木造とは、柱や梁などの材料に木材を使用する工法のこと。「木造ラーメン工法」「木造枠組壁工法」「木造軸組み工法」など、木材の組み方が異なる複数の工法があり、工法によって耐震性も変わります。
耐用年数は22年。遮音性はL-75で、生活音やドアの開閉音なども伝わりやすい点がデメリット。ただし、近年の建築技術の飛躍的な向上により、木造住宅であっても高い防音・遮音性の実現が可能になっています。
また、耐用年数は「資産価値がなくなるであろうと見込まれる年数」のことなので、「建物の寿命」というわけではありません。適切なメンテナンスをすれば、木造でも80年~100年以上暮らすことも可能。実際に歴史的な寺院などは、木造でも1000年以上の時を経て現存しているものもあります。
木造にはどんな工法がある?特徴やメリットを解説
木造ラーメン工法
木造ラーメン工法とは、鉄筋コンクリート造などで使われていた工法を木造に応用したものです。大型施設では採用されていましたが、戸建てに採用されるようになったのはごく最近。柱と梁の接合部を強くすることで水平力に耐えられる枠を形成できるため、耐力壁(※)がなくとも地震に耐えられる力があります。
※耐力壁…垂直・水平方向からの力に抵抗して建物を支える壁
耐力壁を少なくできると壁や柱も減らせるため、大空間や大きな窓、吹き抜けといった設計の自由度が高まり、将来的にリノベーションもしやすいのがメリット。一方、他の工法に比べると費用が高いのがデメリットになるでしょう。
木造枠組壁工法
木造枠組壁工法は、枠材に合板などのパネルをつけて壁をつくり、壁の組み合わせにより建物を建築する工法のこと。この工法の1種としてよく知られているのが、ツーバイフォー工法(2インチ×4インチの角材を使って枠をつくる工法)です。建物を「面」で支える形になるため耐力壁の量が多くなり、耐久性や耐震性・耐風性に優れている点に加え、工期が短い・気密性や断熱性が高い点もメリットです。
一方で、気密性や耐熱性が高いため結露が生じやすく、カビやシロアリが発生しやすいため対策が必要。また、枠で形成された箱型の構造のため、間取りの自由度が低く、開口を大きくしづらいのもデメリットになります。
木造軸組工法
木造軸組工法(従来工法)は昔からある日本の伝統的な工法で、基礎の上に柱や梁、筋交いを組み立てていきます。木造枠組壁工法では「面」で建物を支えますが、木造軸組工法では柱や梁、筋交いといった「線」のみで支えるため、耐力壁の量が少なくなり、耐震性は他の工法に比べると劣るといえるでしょう。しかし、適切な耐震設計により耐震性の高い家を建てることは可能です。
設計自由度が高くリフォームやリノベーションがしやすいほか、昔からある工法のため施工可能な工務店が多いのもメリットといえるでしょう。
一方で、木材の質や大工の腕によって品質に差が出やすい点がデメリット。木造枠組壁工法と比べると工期が長くなるため人件費が余計にかかります。
地震に強い家にするための「構造計算」とは?
構造計算とは?
構造計算とは、建物を建てる際に地震や強風、積雪などに耐えられるかを科学的に検証し、建物の強さを明確化する計算方法のことです。ビルやマンションといった3階以上の建物、RC造や鉄骨造の建物は法律により構造計算が義務付けられていますが、2階建て以下の木造住宅では、構造計算がされていない場合も。
これは以下の3つが理由です。
- 2階建て以下、500平方メートル以下の木造住宅は構造計算の提出が義務化されていない
- 木材の強度が数値化できない
- 構造計算のスキルを持つ人が少ない
地震に強い家を建てるには構造計算が欠かせないものの、木造住宅では構造計算をせずに建築していることもある、というのが実情です。
とはいえ、現在新たに家を建てる場合は最低限の耐震基準を必ずクリアしていなければなりません。構造計算がされていない=地震に弱い・欠陥があるということではないのでご安心ください。
全棟構造計算がされる木造住宅「SE構法」とは?
「SE構法」とは、構造計算できるようにシステム化された木造ラーメン工法のこと。複数の板を科学的に計算しながら結合させた集成材を金属によって接合するため、木造と鉄骨造の利点を合わせ持っています。強度を数値化できる集成材を使うため、構造計算によって木造でも科学的に地震への強さが証明された家を建てることができ、耐震等級3の取得も可能です。
東日本大震災や熊本地震など大規模な震災が発生してきた中、SE構法で建てられた家で倒壊した家屋はありません。東日本大震災では津波の直撃を受けた建物もありましたが、SE構法の建物は構造被害がありませんでした。
また、SE構法は木造ラーメン工法の特徴である大空間・大間口、吹き抜けのような自由度の高い間取りが可能なのもメリット。ライフスタイルや家族の変化に合わせたリフォームやリノベーションもしやすくなっています。
SE構法の住宅会社で、地震に強い木造住宅について学ぼう
木造であっても構造や構法(工法)・設備などによって地震に強い家を建てることは可能です。
ただし、家そのものだけではなく地盤の状態なども含めて家づくりを考えなければならないため、プロの知識や経験による手助けが欠かせません。
まず工務店などが開催するセミナーなどに参加して、知識を深めてみるのはいかがでしょうか?
神戸の注文住宅会社「ホエールハウス」では、定期的に家づくりに関するセミナーを開催中。「構造見学会」では、実際の家の構造を見ながら耐震性を高める家づくりの工夫を知ることができます。
ホエールハウスは兵庫県で唯一、全棟にSE構法を採用。阪神淡路大震災の経験から「家族の暮らしと思い出を守り続けるために、大きな地震にも耐え抜く家をつくらなければならない」という思いで、地震に強く・長く快適に暮らせる家づくりを行っています。
耐震性以外にも、資金や設計、性能、土地探しについてのセミナーも開催していますので、気になるテーマがあれば、ぜひお気軽にご参加ください。セミナーはZoomでのオンライン参加も可能です。