耐震性の高い家の形って?
「耐震性が高い家ってどんな形の家?」
そんな疑問をお持ちの方のために、この記事では耐震性と家の形の関係について詳しく解説します。
正方形
家を真上から見た時の形が正方形の家は、地面が揺れた時に家にかかる負荷を4面の壁がバランスよく支えてくれるため耐震性が高いといわれています。
家を支える壁の長さが均等でなくなるほど、耐震性は弱くなっていきます。横長の家や縦長の家、複雑な形状の家は地震の時に壁や柱にかかる負荷にばらつきが出て、倒壊リスクが高くなってしまいます。
とはいえ、現実的に正確な正方形の家を建てるのは簡単ではありません。多くのハウスメーカーのモデルハウスも全くの正方形は少数派。長方形や若干の凹凸部がある設計がほとんどですが、正方形に近い長方形も、他の形に比べると耐震性は高いといえます。
平屋
地震の際に高層ビルの高層階が大きく揺れるのと同じように、一般住宅でも一階よりは二階、二階よりは三階の方が揺れは大きくなります。
揺れが大きいほど壁や柱にかかる負荷が大きくなるため家の倒壊リスクは増大しますが、平屋は地震の時にも揺れが小さく、柱や壁にかかる負荷が小さくて済みます。
また、平屋は風が当たる面が少なく風による揺れが小さいため、地震だけではなく台風にも強いとされています。
ただし、すべての平屋の耐震性が高いとは言い切れません。大きな窓や広いリビングルームといった作りの場合は耐震性が低下してしまいます。
これは、窓が大きいほど壁の面積が小さくなって家を支える力が低下し、部屋が広くなるほど屋内の壁や柱が少なくなって家を支える力が弱まってしまうから。例え平屋であっても、デザインや間取りと耐震性を兼ね備えた構法を慎重に検討するようにしましょう。
総二階
一階と二階の形が同じで、玄関側から見ても側面から見ても一階と二階の間に凹凸がない建て方が総二階。総二階は地震の揺れがどこか一か所に偏ることなく家の壁全体に均一に負荷がかかるため、耐震性が高いといわれています。同じ地震の強さであっても、家全体の壁がバランスよく配置されていると倒壊のリスクが小さくなるのです。
しかし、総二階の家でも一階に大きな窓や広大なリビングルーム、吹き抜けなどがある場合は柱や壁にかかる力のバランスが変わり、耐震性が落ちてしまいます。
また、総二階の家は外観デザインが単調になりがちなので、凝ったデザインにしたい場合は敬遠されることも。さらに、敷地が平たんでない場合には総二階建築が難しいこともあります。
中央揃え
一階よりも二階の方が小さい場合、一階の中央と二階の中央を揃えると耐震性が向上。二階部分が家の片方に偏っている場合、耐震性は大きく低下してしまいます。
平面形状
平面形状とは、建物を真上から見た時の形状のこと。平面形状が正方形、またはそれに近い形状の建物は耐震性が高いとされています。
平面形状を詳しく図面にしたものが各階平面図。平屋の場合の各階平面図は1枚、二階建ての場合の各階平面図は2枚となります。
各階平面図から壁や柱の位置、窓や扉の横幅がわかるため、それをもとに平面形状を確認して耐震性を推し量ることができます。
立面形状
立面形状とは、建物を側面から見た形状のこと。耐震性が高いといわれている総二階の立面形状は長方形の上に屋根が乗る形になりますが、陸屋根(傾きのない平面的な屋根)総二階なら立面形状は長方形になります。
立面形状を詳しく表した図面が立面図。単純な正方形や長方形の建物なら立面図は4枚、建物の凹凸が増えるほど立面図の数も増えていきます。
立面図から建物の高さや幅、壁の高さや幅、窓や扉の位置や大きさが把握でき、立面形状がわかるため、そこから耐震性を推し量ることができます。
耐震性が低い家の形も知っておこう
耐震性が高い家の特徴と共に、耐震性の低い家の特徴も知っておきましょう。
地震に弱い家の形状って?
平面形状が正方形から遠ざかるほど耐震性は低くなるため、正面に比べて奥行きが長い、奥行きに比べて横幅が長い家は耐震性が低くなります。平面形状がコの字型やL字型、H字型の家は正方形や長方形の家に比べると耐震性が落ちるといえます。
立面形状で見た場合、家の幅に比べて高さが高すぎる家は耐震性が低くなります。二階、三階と上層階が増えるほど耐震性が落ちるのです。
二階部分が一階より小さい場合、土台が安定していて耐震性が高いのではないかと思えますが、一階と二階の大きさが同じ総二階の方が耐震性に優れています。二階が一階より小さく、二階部分が家の一部に偏っている場合は、さらに地震に弱い形だといえるでしょう。さらに、二階部分の一部が一階より大きくなる個性的なデザインは耐震性が非常に弱いと考えられます。
また、地震に強いとされる平屋といえども、屋根部分がせり出している・上方に向けて大きくなるといったデザインなら耐震性は落ちてしまいます。
地震に強い・弱いはどう判断する?
地震に強いか弱いかは、窓や出入り口といった開口部の大きさや壁の大きさ、壁の数、柱の数などの造りや間取りで推測できます。
窓の面積が壁面の4分の3以上であれば、その壁は耐震性が低いと考えられます。小さな窓でも数が多く、壁面の4分の3以上を占めていれば同様。また、大きな玄関や勝手口など、開口部が大きいほど耐震性は低くなります。
1部屋の広さも地震に対する強さの判断基準のひとつ。大きな部屋が多い家は柱や壁の数が少ないため地震に弱くなりますし、吹き抜けや家の中心部分に大階段を作るのも家を弱くする要因となってしまうのです。
地震に弱い形の家の耐震性を上げるには?
地震に弱い家の耐震性を上げるために必要なのは「耐震補強」。大きな窓や開口部、広いLDKの場合、筋交いを入れたり耐震パネルを使った耐震壁の量を増やしたりする耐震補強が有効です。
壁を増やせばせっかくの解放感が失われることになってしまいますが、壁をできるだけ増やさず、窓枠や開口部などに耐震フレームを取り付けて耐震性を確保する方法も。耐震フレームには屋外用・屋内用があり、取りつけたい場所に合わせて選べます。
家の形状が凸凹と複雑な場合は、正方形に近づけるための減築も耐震性を上げる一手。出っ張った部分を減築して正方形や長方形にするのです。二階が一階より大きい場合は一階からはみ出た部分を減築し、総二階に近い形状に整えれば耐震性が向上。極端な場合、二階を減築して平屋にする方法もあります。
屋根を軽量化するのも耐震性を上げるのに有効。旧来の瓦屋根からガルバニウム合板に換えると建物の上部が軽くなり、耐震性が上がります。
これらの工事をする時に留意すべきは、必ず専門家に相談するということ。耐震性は強さ、軽さだけではなく、バランスが大きな要素になるため、しっかりした知識を持った専門家にどこを強化すればバランスが良くなるのか相談しながら耐震補強を進めていくようにしましょう。
形以外で家の耐震性を高める要素とは
間取り
耐震性を重視するなら、小部屋が多い間取りがおすすめ。柱や壁の数が増えるので耐震性が確保できます。
旧来の日本家屋は台所・食事室・居間がそれぞれ別の部屋で、昭和中期にはダイニングキッチンと居間という間取りが多くなりました。ところが、現代の住居はLDK一体型が主流。家の中にLDKという大きな部屋を作って開放的な空間を確保するため当然ながら壁の数は減ってしまいますから、耐震を意識した補強が必要になります。
ビルトインガレージも耐震性を弱める間取りのひとつ。本来、外壁を作って家を支えるべき部分が車の出入り口として大きく開放されてしまうため、耐震性担保のためにはできれば避けたい間取りです。どうしてもビルトインガレージにしたい場合には、補強措置を施すようにしましょう。
二階建ての場合には、総二階にして一階と二階の間取りを合わせると耐震性が高まります。しかし、現実的には一階に洗面所や浴室、LDKを配置することが多く、二階と同じ間取りにするのは無理があるため、二階の壁を支えきれないLDK部分などは耐震補強が必要です。
構造・工法
耐震性は構造・工法に大きく左右されます。木造・鉄骨・RC(鉄筋コンクリート)の工法別に特徴を知っておきましょう。
木造軸組工法
柱と梁、筋交いを組み合わせて建物の骨組みを作ります。設計の自由度が高い一方、耐震性が低いのが弱点です。
木造枠組壁工法
枠材に木製のパネルを接続して壁を作り、その壁を組み合わせて建てる工法。間取りの自由度は低いものの耐震性が高いのが特徴です。
鉄骨軸組工法
鉄骨製の柱や梁を組み合わせる工法で、設計の自由度が高いのが特徴。各パーツが工場生産なので品質が均一になり、耐震性は木造に比べると格段に高くなります。
鉄骨ラーメン工法
鉄骨軸組み工法と似ていますが、柱と梁の接合は溶接されます。強力な枠組みができるので耐震性が高く、設計の自由度も高いのが特徴です。
RC壁式工法
柱や梁を設けず、壁だけをベースに組み立てる工法のこと。木造や鉄骨よりも強度が高く耐震性にも優れているため、中層マンションなどによく使われています。
RCラーメン工法
鉄筋コンクリートの柱と梁を組み立てる工法のこと。耐震性が非常に高いため、高層マンションなどに使われています。
一般的な戸建て住宅では、鉄骨やRC構造は少数派。日本は木造建築への愛着が強い国でもあり、木造住宅に高い耐震性を期待する人は少なくありません。しかし、木造建築は数的な構造計算が難しいのが難点。木材は強度に個体差があり、構造計算をしようにも強度を数的に把握するのは困難なのです。
そこで注目したいのが、木造でありながら高い耐震性を持つ「SE構法」と呼ばれる建築法です。
SE構法に使われる木材は、板や小角材を均一に乾燥した「構造用集成材」と呼ばれるもので、弱い部分を除去して接着して作られる集成材とは異なり、建造物の躯体に必要な強度を持つように加工された集成材。強度規格が定められているため、天然材よりも均一的な強度を誇ります。
構造用集成材を用いているSE構法の家は、正確な構造計算が可能。つまり、どの程度の耐震性が期待できるかを理論的に計算できるのです。
実際にSE構法の住宅は、東日本大震災・熊本地震でも倒壊ゼロの実績を持っています。
SE構法は、耐震性だけでなくそのデザイン性の高さも大きな魅力。柱と梁を強力な金具で接合するため支えの少ない大空間でも耐震性を維持することができ、吹き抜けや広々したリビング、大開口の窓や玄関といった自由度の高いデザインを楽しむことができます。
耐震性とデザイン制を併せ持つSE構法ですが、その建築技術を持つのは「SE構法登録工務店」の資格を持つ工務店のみ。そんな中、神戸で唯一、全棟をSE構法で施工しているのが「株式会社WHALE HOUSE」です。
阪神淡路大震災で大きな被害を受けた神戸の住宅会社だからこそ、高い耐震性を持った家を多くの人に提供したい。ホエールハウスは、そんな想いで「全棟SE構法」にこだわっています。
住まいの耐震性について学びたい方のために、ホエールハウスでは定期的に「耐震に関する無料セミナー」を開催中。参加はもちろん無料ですので、お気軽にご参加ください。
地盤
家の耐震性は建物の形だけでなく、地盤も大きな要因。当然ながら、しっかりした地盤なら地震による揺れが小さく済む可能性は高くなります。
2000年の建築基準法改正で、新築住宅に対して「地盤調査」と「調査結果に合わせた耐震設計」が義務付けられましたが、2000年以前に建てられた住宅は地盤検査が行われていない可能性があるため、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」や各自治体が発表しているハザードマップでお住いの地域の地盤状態を調べてみるとよいでしょう。
地盤の状態が良くない場合は、地盤改良工事が必要。地盤改良工事には「表層改良工法」「柱状改良工法」「鋼管杭工法」などがあり、工事費が全く違います。
- 表層改良工法
- 地表から2m程度の土と強固剤を混ぜて地盤を固めます。1坪(3.31㎡)あたり約3万円。
- 柱状改良工法
- 地表から2m〜8m程度の深さまでコンクリートの柱を注入する工法。柱の数は地盤の状態と広さで調整します。1坪(3.31㎡)あたり約5万円。
- 鋼管杭工法
- 5m~10m程度の深さまで鋼管を打ち込む工法。鋼管の数は地盤の状態と広さで調整します。1坪(3.31㎡)あたり約7万円。
素材(木造/鉄骨)
住宅建築の素材では、木造よりも鉄骨、鉄骨よりも鉄筋コンクリートの耐震性が高いとされています。
戸建て住宅では木造か鉄骨が一般的ですが、木造の中でもSE構法に使用される構造用集成材は木材でありながら耐久性と強度に優れており、一般的な木材よりははるかに耐震性に優れた素材といえます。
基礎
地震の揺れが建物を直撃した時、壁や柱と共に大きな負担がかかるのが建物の基礎。基礎がその負担に耐えられなければ、建物は崩壊してしまいます。
日本の住宅の基礎には鉄筋が入っていないことが多かったのですが、1981年には住宅の基礎コンクリートに鉄筋を入れることが義務付けられました。
それ以前の建物の基礎は耐震性が非常に低い可能性があり、1981年以降に建築された住宅の基礎も経年劣化の不安はあります。心配な方は基礎の補修工事を検討しましょう。
補修工事には住宅をジャッキアップする大掛かりな工事から既存の基礎に新しい基礎をつなげる工事までさまざまな方法がありますが、どのような工事を選ぶのかは専門家の判断にゆだねられます。